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サイコテロ  作者: 心楽
30/39

ジャンプ

 ◇ニ十階◇

 爆発音が上から聞こえ、氷室と茜は上を見上げる。「何かあったんですかね?」

「誰かが巻き込まれたかもな、だが、それだけだ。成すべき目的のため皆動いている。人の心配をしている暇は無い」

 氷室は見上げるのを止め、辺りを見渡す。

「しかし、さすがに黒犬居すぎだろ」

 黒いスーツを着た数人の男達が横たわっており、その真ん中に氷室と茜は立っている。

「確かにそうですね」

 茜は、ずれたニット帽を被り直す。

 そんな茜を見て、氷室は口を開く。

「それ、吉備のか?」

「はい、吉備さんに貰ったものです。それが何か?」

「吉備が今のお前を見たら大喜びだな」

「へ?」

 不思議そうな顔をする茜に背を向け、氷室は上に上がる階段に向かい歩く。

「それ、どういう意味ですか!? ちょっと、氷室さん!?」

 背後から叫びながら付いてくる茜の声を無視して、氷室は歩く。

 氷室は茜に気付かれないように笑う。

 ――まだ、幸せを感じれていたんだな。あの時から、何も感じなくと思ったんだが、吉備のお陰か

 俯いて歩いていた氷室に、前から突然声がかけられる。

「よう、久しぶり」

 昔、聞いたことがある声に、氷室は顔を上げる。

 上に行く階段に包帯を顔に巻いた男の横に、壁に背を預けて立って上に指を向けている男が口を開く。

「上でやろう」

 後ろから来た茜が、上に指を向けた男の顔を見て息を飲む。

 自分の傍に立っている氷室と、余りにも似ている男の顔を見て。

 男は上に上がって行き、氷室も包帯の男の横を通り抜け、上に上がって行く。 氷室の後を追おうと茜は階段に近づくが、立ち塞がるように包帯の男が立ち上がる。

「退いてください」

「……あいつらは決着をつけないといけないんだ。お前が行く理由がどこにある?」

 包帯から覗く鋭い眼光を体に浴びながらも、茜は怯まず男を睨み、体からバチバチと電気がはしる。

「私は誰も殺させない。そう、決心したから」

 茜が右手を振ると、電気が包帯の男の顔面に襲いかかる。

 が、そんな茜の不意を突いた攻撃に包帯の男は素早く反応し、頭を横にしてかわす。

「理由になってない」







 ◇四十五階◇

 大きな爆発音とともに、階全体が揺れる。

 新居橋は情けない顔をより情けなくしながら、必死に柱にしがみつき、その横で馬島は揺れをものともせずに立っている。

「なっなんですかこれ!」

 新居橋は震動が収まると同時に叫ぶ。

「伊藤さんが戦ってるかもしれませんね」

 冷静に呟く馬島を見て、新居橋はまた叫ぶ。

「ほんとですか!? すぐに助けに行かないと!」

 駆け出そうとする新居橋に、馬島はいきなり斬りかかった。

「うわっ!」

 頬に刀が掠めながらも、不細工としか言いようがない、情けない避け方で新居橋は避ける。

 新居橋は座り込み頬を押さえながら、馬島を見上げる。

「なななななっ何するんですか!?」

 叫ぶ新居橋を無視し、馬島は刀を首に突きつける。

「あなたは誰です?」

「だっ誰って、新居橋ですよ」

 震える声で新居橋は馬島に訴える。

「違う」

 が、馬島は首を横に振り即答する。

「全然違う。新居橋さんは確かに、顔も声も体格も身長も身体能力も、今のあなたと一緒ですが、思考が違う。新居橋さんはもっと悩む、悩んで悩んで悩むんです。自分に自信が無いから、自分が異常な存在と認知しているから」

 馬島は更に刀を新居橋と呼ばれる男の首に近づける。

「しかし、さっきのあなたは何ですか? 伊藤さんが襲われたかもしれない。だから、助けに行こう。違います。本当の新居橋さんなら悩みながら行きます」

 馬島が男の首を貫こうと手に力を込めた瞬間、男に馬島は蹴り飛ばされる。

 馬島はバク転をして受け身を取り刀を構える。

 新居橋と思われる男は既に立ち上がっている。

「あ〜、まっさか見抜かれるとはな〜」

 男は新居橋の情けない顔のままだが、その顔にはもう情けなさは感じられない。

「そんなに情けないのかよ、パクんの無理だろこれ」 男が顔に手を当てると、髪の毛は茶色く変わって行き、身長も伸びる。

 体つきや髪が変わってしまった男が、顔から手を外すと、四十代くらいの新居橋の顔は、二十代くらいの顔に変わっていた。

「もう一度聞きます。あなたは誰です?」

「俺はpeace7のユキだ。俺からも質問あんだけどいい?」

「いいですよ。死ぬ前に一つだけ」

「俺さ、触った人間の顔や体格、身体能力とか、全部まね出来るんだけどさ、あっ、超能力は無理だけどね。それでさ、自分と戦ったことある?」

 ユキが顔に手を当てて、変化を始める。

 変化が終わると顔から手を外し、馬島の顔で馬島に笑いかける。

 ユキは刀を腰から抜いて構える。

「感想は?」

「ドッペルゲンガーと会った気分です」

「なら、お前死ぬよ?」

「ドッペルゲンガーは僕の方かも知れませんよ?」

「そんな返し方したのお前だけだ」

 ユキは刀を横に構え、駆け出した。









 ◇十五階◇

「何か聞こえなかったか?」

「いえ、僕は何も。竜介くんは?」

「いや、俺も」

「私も、希美さんは?」

「いえ、私も聞こえないかったです」

 佐藤は微かな音を聞いたが、夏樹を始め、花宮と竜介、黒瀬も聞こえていなかった。

「聞こえたはずなんだが」「そうですかね?」

 佐藤と花宮、神藤が話しながら、歩いて行く中、竜介はふと窓を見た。

 するとそこに見覚えのある金色の頭が窓の外にあった。

「え!?」

 竜介が瞬きすると、もうすでに金色の頭は消えている。

「神藤! このビルって非常階段とかあるのか?」

 いきなり大声を出した竜介に驚きながらも、夏樹は振り返り答える。

「はい。ここから二階下の階に外に出るドアが合ってそこから……」

「ありがとう」

 夏樹が言い終わらない内に、竜介は駆け出す。

 そんな竜介の後ろ姿を見つめながら、花宮は呟く。

「大丈夫かな?」

「皆、何かしら目的があるんです。僕らが付いていくと邪魔なだけです」

「……でも」

 花宮は訴えるように夏樹を見るが、夏樹は真剣な顔で言う。

「危険だと分かってて、皆来たんです。覚悟が無いなら帰ってます」







 竜介は確かめずには居られなかった。

 さっき窓の外に見た金色の頭が、幻や妄想、自分の希望から見えたものかもしれないと分かっていながら、確かめずには居られなかった。

 下に降りる階段に向かい竜介は駆ける。

 竜介は階段の近くで更に加速し、階段を飛び降りた。

 小さな希望を抱いて。


皆さんお手数ですが、この心楽を育てるためと思っと感想や評価を下さったら嬉しいです! よろしくお願いします! 待ってます!では、心楽でした

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