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サイコテロ  作者: 心楽
20/39

脱出

更新遅れてすいません!これからも頑張って行くのでよろしくお願いします!では、感想、評価待ってます!心楽でした

 暗闇の中、竜介は走っていた。

「はぁ、はぁ、くそっ!」

 竜介は水谷を置いてきてまで逃げている自分自身を叱咤する。

 水谷に二回も助けてもらっている。

 思えば何もせず助けてもらって逃げてばかりだ。

 そんな自分自身に対してまた竜介は舌打ちする。

「とんだチキン野郎じゃないか」

 自然と涙が溢れだす。

 その時、後ろから誰かが駆けてくる。

 水谷かと、淡い希望を持ちながら竜介は振り返るが、そこには長刀を横に振りかぶった馬島がいた。

 竜介は足がもつれ、不恰好に転がり、長刀は竜介の頭があったところを通り過ぎる。

 二、三回転した後、立ち上がろうとした竜介は、長刀を上に振りかぶったまま目の前に立っている馬島を見て、腰が抜け座りこんでしまった。

「竜介、何か言い残すことはある?」

 長刀を振り上げたまま馬島は言った。

「僕達、友達だよな?」

「いや、友達だっただよ」 馬島が長刀を振り下ろした。

 風を切りながら振られる長刀。

 竜介は死を覚悟し、目を瞑った。

 が、固い金属音がしただけで、長刀は振られてない。

 竜介が恐る恐る目を開けると、目の前に大きな何かの金属で出来た壁が現れていて、長刀を止めている。

 竜介が呆気に取られていると、竜介の乗っているコンクリートだけが、滑るように移動する。

 進行方向を見ると、少年と女性、それと同じ歳ぐらいの少女が立っていた。

 するといきなりコンクリートが隆起し、竜介の体は空中に舞い上がった。

「うわああああぁぁぁ」

 情けない声を竜介は上げる。

「黒瀬さん、キャッチして下さい」

「私ですか!? そこは男の神様が!」

 少年の問いかけに黒瀬と呼ばれた女性は呆れながら答える。

「僕はあの人を止めるのに精一杯です」

 それを冷静に答えながら、馬島の周りにさっきの金属と同じものを出して行く。

「分かり……ました」

 黒瀬は一歩前に出ると、しっかり竜介を抱き止めた。

「花宮さん、黒瀬さんの腕に捕まって下さい」

 花宮と呼ばれた少女が黒瀬の腕を掴むのと同時に、少年も黒瀬の腕を掴む。

「飛んで下さい」

「飛ぶ!? 飛ぶって何!?」

 少年の言葉に竜介が反応したのと同時に、四人は消えた。

 馬島は四人に逃げられたのを確認すると、携帯を取り出す。

「もしもし」

「黒狼です。ターゲットを抹消出来ませんでした」

「……そうか。君にしては珍しい失敗だな? 友達だから見逃したのか?」

 電話越しで男はクククッと笑う。

「そういう訳ではありません。邪魔が入りました」

「邪魔?」

「はい。能力者です」

「能力者? どんな能力だ?」

「金属の壁を何処からともなく出す少年と、瞬間移動をする女です」

「やはり、東京に居たのか?」

 男はまたクククッと笑い、馬島は意味が解らず眉をひそめる。

「いや、こちらの事だ。まあ、息子のことはもう放っておけ、もうすぐ実行するんだ。今、バレたところでどうにもならん」

「分かりました。伊藤龍哉さん」

 馬島はそう言って携帯を閉じた。







 竜介と少年と黒瀬、そして少女は黒瀬の能力で、活動拠点のビルに瞬間移動しながら戻った。

 そこには、暗い顔をした二人の男女が居た。 女の目は真っ赤になっている。

 黒瀬に抱えられていた竜介は地面に降ろされると、少年が男と話し始めたので、部屋から出ようとしたが、少女がその前に立ち塞がった。

「何処に行くの?」

「何処……って言われても……てか、ここ何処だよ!?」

 少女にいきなり話しかけられ、困惑しながらも、竜介は部屋にいる全員に向け、質問を投げ掛けるが、少年は男と話していて、女は黒瀬と話している。

 質問に答えたのは目の前の少女だけであった。

「……うーん、何処って言われても……ここはhomeとしか言えないよ」

「homeって家、って意味だよね? ここは君達の家ってこと? そんなこと分かってるよ。とにかく僕はこの東京から逃げないといけないんだ」

 竜介が部屋に一個だけある小さな窓から見える東京タワーを指差し、少女を避け、少女の後ろにあるドアを開けようとすると、少女は進路を遮るように手を胸の前でブンブンと振りながら竜介の前に立つ。

「違う! そう意味のhomeじゃなくて……あーー」

 少女は困ったように髪の毛を掻きむしると、顔を勢いよく上げ、竜介に顔を近づける。

「とにかく! 説明はあの人がしてくれるから!」

 少女は男と話している少年を指差す。

「今は待って! 私と話でもしよ!」

 と言うと少女は竜介の手首を掴み、部屋の隅に引っ張っていた。

 竜介は充分話してるだろ、と思いながら部屋の隅に胡座をかいた。

 逃げないと分かったのか、安心した少女は竜介の隣に座る。

 その切れ長の目、長い睫毛、高い鼻に少し浅黒い健康的な綺麗な肌を持つ横顔を見ながら、竜介はこの少女が巷では美少女と言われる部類に入る少女と気づいた。

「名前、何て言うの?」

 少女が竜介の目を見て言うので、否応なしに今、美少女とかなり近い距離で、しかも二人だけで話しているのにも気づき、竜介は顔を伏せた。

「……名前は?」

 中々返ってこない答えに不思議に思ったのか、少女はまた竜介に問いかけた。 竜介は変に意識している自分に舌打ちしながら、少女を見据え言った。

「人の名前を言って欲しかったら、自分の名前から言うべきだ」

 ポカンとしている少女の顔を見て、三下の王道のようなセリフを吐いた竜介は、変に意識してまたやってしまった失敗のせいで、みるみる耳まで顔が真っ赤になり、それを少女にさとられないように顔を伏せる。

 すると、竜介の横から笑い声が聞こえた。

 竜介が横を見ると少女が笑っていた。

 少女は竜介に笑っているのを見られたのに気づき、笑うのを止める。

「ごめんなさい。でも、君って面白いね。私の名前は花宮 唯、あなたは?」

 花宮は竜介に笑いかける。

「伊藤 竜介」

「伊藤くんね? よろしく」

 花宮は竜介に手を差し出すが、竜介はその手を少し見つめてから、目を剃らす。

「まだ、君のことは信用してない。君達は何なんだ?」

 そう言って、竜介が花宮を見ると花宮はやはり答えられないのか下を向いた。

 その時、

「僕が話しますよ。僕達が何なのか、そして、あなたが襲われていた理由も教えて貰います」

 男と話していた少年が竜介の側に立っていた。

「僕の名前は神藤 夏樹です。僕の名前を言いましたから、あなたの名前、教えてくれますよね?」

 微笑む少年を見て、竜介はここに来て二度目の舌打ちをした。

「伊藤 竜介」

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