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サイコテロ  作者: 心楽
19/39

大海再会災害?

「食った食った」

 日が落ちた夜、港の倉庫と前に二つの人影があった。

 八重歯が目立つ少年水谷は、お腹をポンポンと叩き満足したように笑った。

「俺の金だけどな」

 そんな水谷を見て、竜介は落胆する。

 水谷のお陰で竜介の財布には、茶色い銅貨が一枚ほどしか入ってないからだ。 頭をガックリと落としている竜介の背中を水谷は叩く。

「まあ元気出せよ! 腹が減っては逃亡できぬ! ってな」

「うまくねーよ! マジふざけんなよー。今からどうすんだ!? もう夜じゃん!?」

 竜介が水谷を睨む。

 水谷は困ったように視線を逸らしながら、頭を掻く。

「あーー、まっ、野宿かな」

「ふざけんな!」

 竜介は水谷の襟首を掴みガクガクと揺する。

「お前、肝臓でも売って金作れよ、光希ー!」

「おいおい、カルシウム足りてないんじゃないか? 牛乳買って来たら?」

「光希の所為で金ねーんだよ!」「逆ギレかよ」

「正当ギレだよ!」

 竜介は必死の剣幕で水谷に迫るが、水谷はヘラヘラしている。

 その時、上から声が聞こえた。

「はい。発見しました。始末します」

 竜介が水谷の襟首を掴んだまま、二人が声のした方を見上げると、倉庫の上に一人の人影が立っていた。 人影は高さ八メートルほどありそうな倉庫の上から飛び降り、難なく着地した。

 月の光が人影を照らした。 そこには、真っ黒な長い髪を高い位置で括り、月に照らされた妖艶な真っ白な肌をした、黒いスーツを着た背の高い少年が現れた。

 二人はその少年を見て固まった。

 しばらく黙った後、水谷が口を開いた。

「拓真……なのか?」

「そうだよ」

 水谷と竜介が一緒に高校生活を送っていた少年、馬島拓真は長刀を鞘からゆっくり抜いた。

「何をする気なんだ?」 竜介は自分の最悪の予想が当たっているかもしれないという不安で、顔面蒼白になっている。

 月の光が当たり、馬島の持っている長刀は妖しい光を放っている。

「君を殺す」

 その瞬間、一気に馬島は距離を詰める。

「危ねぇ!」

 水谷が言葉を発したと同時に竜介を抱えて横っ飛びした。

 風を切る音が水谷の頭の上を通り過ぎる。

 水谷は素早く体勢を立て直し、竜介を庇うように前に立つ。

 水谷はまるで避けられると思ってなかったかのように、空振りしたままで止まっている馬島に問いかける。

「本当に殺る気なんだな?」

 馬島はゆっくりと長刀を中段に構え、剣の切っ先を水谷の喉元と直線上に合わせる。

「ああ」

 水谷は服の内側から無骨な分厚いナイフを二本取り出し、両手に構える。

「竜介、下がってろ! そして、逃げれると思ったら逃げろよ!」

「でも」

「俺は大丈夫だ! だから逃げろ!」

 竜介が逃げようとした瞬間、馬島は一瞬で間合いを詰め、振りかぶった長刀を真上から振り下ろしたが、水谷がナイフを交差させて受け止める。

 つばぜり合いをしたまま水谷と馬島は睨み合う。

 水谷は馬島を押し返し君を取る。

「今まで、友達だと思ってたのは俺たちだけだったのかよ!」

 水谷は歯を食いしばる。

「答えろよ拓真!」

 馬島は困ったように笑ったが。

「そうだよ」

 平然とした顔で言った。







 花宮と黒瀬と夏樹は会計を終えて店から出た。

「お腹一杯です」

 夏樹は満足そうに笑顔を浮かべる。

「そんなに食べて大丈夫なんですか?」

 成人男性の三倍の量は食べた夏樹を花宮は心配になった。

「大丈夫ですよ。成長期ですから」

「そういう問題じゃないと思うんですが」

 黒瀬は冷静に夏樹につっこむ。

「まあいいじゃないですか。帰りましょう」

「飛びますか?」

 『飛ぶ』とは、黒瀬が瞬間移動をする時の用語となっている。

「こんなに人がいるところでやるつもりですか? 歩きましょう」

 と言って夏樹は先頭に立って歩き、花宮と黒瀬は着いていった。







 竜介はまだ逃げられずにいた。なぜなら、逃げようと試みる度に馬島はそれを邪魔するのだ。

 竜介の喉元に突かれた長刀の先を、水谷はナイフで叩き下ろし馬島の顔面を切り裂こうとするが、それを馬島は首を傾け避ける。

 馬島は叩き下ろされた長刀を上に向け振り上げようとするが、刃が上を向く前に水谷は長刀を両足で踏みつけ、馬島の胸に蹴りを放った。

 馬島は後ろに倒れそうなるが、バク転をして受け身をとり長刀を構ようとした。

 が、水谷が馬島に飛びかかっていた。

 水谷は馬島の前から背中に腕を回し、馬島を拘束する。

 馬島は腕を振りほどこうともがく。

「竜介! 早く逃げろ!」

 水谷の叫びに背中を押され、竜介は水谷に背を向け走り出した。

 竜介の姿見えなくなった時に、馬島は腕を振りほどき長刀を横に薙ぐが、水谷は後方に跳んで避ける。

 馬島が竜介の後を追おうと走り出そうとする。

 しかし、水谷が両手に持っているのとは別の、小さなナイフを投げたことで、馬島はそれを長刀で弾き、止まった。

「結局のところ、光希を倒さないと竜介を追えないみたいだね」

 二人は自分の得物を構え向かい合う。

「その通りだな」

「さっきは竜介がいたけど、今から本当に一対一の戦いだよ? 僕は強いよ」

「大丈夫だ。俺はかなり強いから」

「でもまあ正直、僕は光希がここまでやれる奴とは思ってなかったよ。最初の一撃で二人とも殺せると思ってたからね」

「能ある鷹は全てを隠す」 水谷はニヤリと笑った。

「竜介の言葉を借りるなら、うまくねーよってところかな?」

 馬島も小さく笑った。 水谷は姿勢を低くし馬島に向かって行く。

 馬島は長刀を横に薙ぐが水谷はそれを跳んで避ける。

 港の縁に立っている馬島を海に突き落とそうとナイフを振るう。が、馬島は高い跳躍をして水谷の上を舞った。

 水谷の背後に着地すると同時に長刀で水谷の背中を斬りつける。

「あっ」

 口から音を洩らし、膝を着きそうになった水谷の背中を馬島は蹴りつけた。

「言っただろ? 僕は強いって」

 派手な水しぶきを上げて、海に落ちていった水谷を見て馬島は言った。

 海は水谷が落ちたところだけ真っ赤に染まっていった。

「さて、次は竜介だな」

 馬島は長刀を鞘に収まると闇に向かって駆け出した。










 水谷は海に沈んていく。

 背中の斬り傷から血が溢れだし、血煙となって水面に上がっていく。

――竜介は逃げられるのか?

 水谷は拳を握りしめる。――俺がもう少し引き止めれたら!

 歯を食いしばる。

――くそっ! また親友との約束を守れねえのか!?

 水谷は全身の力を抜いて、ただただ海に沈んでいく。

――ああ、情けねえ。約束一つ守れねえなんて

――……大海や、毒蜂沈む水の音

 水面に映る月が波でゆらゆらと揺れた。

「笑ってんじゃねえぞこの野郎。うまくねぇだろ?」

 水谷の口から泡と共にガバカバという音しか出なかった。

 私、心楽は……ギターを買いました! いや〜楽しいです! めちゃくちゃ楽しいです! 皆さんもどうですか? 感想・評価待ってます。では、心楽でした。

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