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サイコテロ  作者: 心楽
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黒狼

「どうしたどうしたどうした!?」

 吉津は両手を天に向けて上げ、笑う。

 氷室は飛び掛かろうとするが、紐状になって串刺しにしようと襲いかかってくる影のせいで近づくことが出来ない。

 ちっ、と舌打ちをして氷室は距離を置いた。黒い紐状の影は吉津の周りを囲むようにゆらゆら漂う。

 ピタリと黒い影は一瞬動き止め、氷室に襲いかかる。

 一本一本、あらゆる方向に飛んでいき放物線を描き氷室に集まる。

 氷室はそれを跳んでかわすが、それを読んでいた吉津は黒い紐を駆け登り、一番高い所に放物線を描いている黒い紐を踏み台にし、跳んだ。

 氷室は黒い紐に集中していたため、その吉津の動きを気付いていなかった。気付いた時には、右手を思いきり後ろに引き、笑っている吉津の姿が目の前にあった。

 防御することも出来ず、拳は氷室の顔に寸分の狂いも無くめり込んだ。

 氷室は吹き飛び、意識が混濁する。 吉津は更に追い討ちをかける為に黒い紐を黒い球体に変え、地面で跳ねたその体を潰そうと振り下ろす。

 しかし、氷室は一、二回跳ねたところで意識を取り戻し、即座に横に跳んでかわし、ペットボトルを腰に着けてあるバックから取り出し、口でキャップを開ける。

 ペットボトルから水が少し出たところで凍らせて、それを投げる。

 キャップからでた氷は鋭く、吉津を貫こうと飛んでくるが吉津自身の黒い人型の影がそれを弾く。

「そんなんで大丈夫か?」

「黙れ」

 質問を一蹴すると、氷室は体勢を低くしながら吉津に向かい駆ける。







 氷室と吉津が交戦している場所から、少し離れたビルの屋上に茜はいた。

――外せない

 茜は胸の前で両手を開いて、手のひらと手のひらを合わせた。目を閉じ、歯を食いしばる。バチリと小さな音が響いた瞬間、茜の両手は蒼白い電気を帯びだした。

 それを確認すると茜は両手を水平のまま離していった。

 開いていく手と手の間に蒼白い電気を帯びる光る棒のような物体が現れるにつれ、茜の呼吸も荒くなっていく。

 真横まで手を伸ばした時、その棒のようなものは空中で静止した。

 茜はそれを右手で持ち、荒い息を整える。

――二度しか使えない。外せない

 茜は電気を操る能力を有しているが、正確には体の中に電気貯める事ができ、その体の中にある電気を使う能力で、体外に出すことはとても体力を使う。

 その為、茜は普段体の中で電気を流し電気を貯める必要がないようにし、電気信号で成り立っている神経を電気を流すことで素早い反応をしたり、筋肉に流すことで女性とは思えない力や速さを発揮する。

 今、茜が手に持っているのは電気で、茜が貯めれる電気の総量からいうと、この電気の棒は二回しか使うことが出来ない。

 茜は右手を肩の上に上げ、槍投げの選手のようなポーズで吉津に狙いを付ける。

 外すことは出来ない、外せば今の自分の場所がばれる、しかも今のような不意討ちも効かない、電気の総量も半分になってしまう。 そんなプレッシャーから茜の右手は震え、口は渇く、しかし、茜の瞳には意思がみなぎる燃えるような瞳をしていた。

 息を大きく吸い、氷室の方に気が取られている吉津の背中に電気の棒を投げた。

 電気の棒は風を切り、無防備な背中に飛んでいく。 勝った、と茜がホッとした瞬間、氷室に襲いかかっていた全ての影が吉津の背後に回り、大きな黒い盾を造った。

 電気の棒が盾とぶつかり、大きな爆発音が辺りに響いた。

 茜が電気の棒が防がれたショックで頭が真っ白になっていると、盾を造っていた影は球体になり、茜がいるビルにぶつかってきた。 ビルが真ん中で折られて、茜がいる屋上の地面はだんだん傾き始めた。

 茜は重力に従って落ちていく前に、地面を蹴り、下にある電信柱を掴むという賭けに出たが、成功するか失敗するか解らないまま、電信柱は黒い球体によって潰された。

 とうとう足掻く事も出来なくなった茜は、とにかく死なないように両手で頭を抱え込み、目を閉じた。

 茜の赤みがかった長い髪を風が振り乱す。『死』、その一文字が茜の頭によぎった瞬間、下から冷たい風が吹いてくる。

 目を開けると氷室が両手を天に向け、手のひらから冷たい風を出し、落下の速度を下げている。

 氷室は落ちてきた茜を抱き留める。

 その時、黒い紐が氷室の背後から迫ってきたが、氷室は茜を抱き締めたまま、それをかわして距離を置く。

 氷室は茜を地面に下ろす。

「大丈夫か」

「はい、おかげで」

 茜が目に掛かった髪を払って吉津の方を向く。

 ゆらゆらと影を周りに漂わせながら、吉津は茜の視線に気付き、笑った。

「残念だったな。俺の、この俺自身の影がただの影だと思ったのか?」

 茜と氷室が黙っているとまた嬉しそうに吉津は笑った。

「俺の影は目を持ち、耳を持ち、嗅覚を持っていてそれは俺と全て共有しているんだ。俺がお前に背中を向けていようが俺の影がちゃ〜んと俺の後ろを見てくれてるんだ」

 吉津は横にいる同じ背格好の自分の影の頭をポンポンと叩く。

「さて、どうする?」










 あるビルの屋上で黒いスーツを着て、髪を後ろでくくった少年が携帯で話している。

「見つけたか?」

「はい」

 携帯から聞こえてくる問いに少年は答える。

 少年の背中には身の丈ほどあろうかという長刀が掛けられている。

「夜になってからにしろ。君の武器は少々目立つ」

「はい。しかし今、超能力者同士が闘っているようですがそちらはいいのですか?」

「ああ。そっちは構わない。超能力者同士で潰し合って生き残った方を他の奴らに殺させる。君はそっちに集中しろ」

「はい」

「君なら必ず出来るだろう?」

「はい。しかし、他の者でも可能です」

「可能では困るんだ、可能では。彼らは何回も逃げて、しかも彼らを追った何人かは殺された。黒犬の最高戦力の君、『黒狼』に頼む失敗は許されない」

「はい。分かりました」

「それに、君を見ると彼らは動けないかもな」

 ククッと小さな意地の悪そうな笑い声を上げると相手は電話を切った。

 ツーツーと流れる停止音を聞くと、ゆっくりとした動作で携帯を閉じてポケットに入れ、少年は迷うことなく屋上から飛び降りた。りた。

 水谷、竜介、花宮は高校二年生です。夏樹は中学一年生です。説明するのすっかり忘れてました。すいません。感想、評価よろしくお願いします。そして、こんな作品を読んでくれている皆さんに感謝です。

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