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森と少女と道化師  作者: 黒羊 鈴
8/8

運命

涙が止まらなかった。僕の蛇口は壊れて手帳をびしょびしょにしてしまった。

全部思い出した。僕がどんな人間か。どんな人生を送ってきたか。なぜこの森にいるのか。そして鈴がどんな人間だったか。鈴は僕のために死ぬ...

気づいたら小屋から出ていた。死なせるもんか。どうすればいいかなんて分からない。ただこの足がちぎれるまで僕は走る。鈴を救う。まだその可能性が1%でもあるならなんだってやる。半年の寿命なんていらない。

今僕が欲しいのは鈴。君だ。

僕は森の中を走り回った。心当たりがある場所は全て行った。お風呂、畑、湖、他にもたくさん。そこを見るたびに涙が溢れてくる。だが僕は止まらない。転んでも立ち上がってやる。鈴を救えるのなら。ある場所が脳裏に浮かんだ。全てはあそこから始まったんだ。

僕が自殺をしようとした場所。

着いた。そこは土、石、きのこ、木しかない場所。僕がここに来る前に買ったナイフとコーラが転がっていた。僕がここで自殺をすれば鈴は生き返る。それか僕も鈴の所に行ける。そう考えた。

僕はナイフとコーラを拾い、近くにあった木にもたれかかった。思えばいろんなことがあった人生だった。全てを思い出した僕は思い出を振り返りながら腐っているかもしれないコーラを飲み余韻に浸る。後悔はない。僕は自殺をしようとしていたが鈴に助けられ死ぬ前に鈴とともに暮らせた。一つだけ後悔があるとすれば鈴にごめんねとありがとうを伝えるくらいだ。

『鈴ごめんね、』

誰もいない森で僕は言った。

『また泣いてる、ダメだよ』

するはずのない返事が聞こえてきた。幻聴に違いない。最後の最後に鈴が力を振り絞って言ってくれた、そう僕は捉えた。

コーラを飲み干し僕は覚悟を決めた。立ち上がりナイフを自分の方に向けた。

『鈴、ありがとう』

泣きながら笑い、笑いながら泣いた。ナイフは僕の腹に刺さっているのが確認できるのに痛みはない。ただすーっと意識が遠のいて僕は眠りについた。


『愛人ー、愛人ー?』

僕を呼ぶ声がする。目が覚めると見覚えのある顔がある。

『あんた、いつまで寝てるの?今日退院でしょ?』

母親だ。いつものようなガミガミ声で僕を起こしてきた。病人なんだからもう少し優しくしてくれればいいのに。そんなことを思いながら僕は退院の準備をして隣町の自宅まで母の車で帰る。帰りの車、僕はふと思った。

『ねぇ母さん、僕ってなんで入院したんだっけ?』

『もう冗談やめてよ、一昨日急にお腹痛いとか言い出したのはあんたでしょ?急にお腹抑えて倒れ出すからびっくりしたんだからね?』

へぇー。なぜか自分のことなのに覚えてない。まぁいいか。僕は自宅に帰り当たり前の生活に戻った。起きたら朝ごはんを食べ学校に行った。午前の授業を終えた僕は昼ごはんを食べるため友達と中庭へ行く。

『なぁ愛人、今週の日曜日映画行かね?』

友達が遊びに誘ってきた。

『んーいいよー、映画のあとはどっか行く?』

『カラオケとかでいんじゃね?』

そんな大雑把な予定を立て僕達は昼ごはんを食べて教室に戻りまた授業を受けた。帰ってからお風呂に入って晩ごはんを食べて勉強をして寝る。そんな普通の高校生を僕はしている。だが何かが足りない。なにか大切なものを忘れているようなそんな気がすることがよくある。考えてみるけどなかなか思い出せない。



『鈴ー起きなさーい』

1階から私を呼ぶ声がする。寝ぼけながら私は階段を降りて朝ごはんを食べる。身支度をしたら学校へ向かい勉強をしてそのあとに部活をして家に帰る。お風呂に入って晩ごはんを食べて少し勉強をして寝る。そんな当たり前の1日を終えようとしていた時友達から電話が来た。

『もぉ、こんな遅くに何よ』

少し眠かったため私は不機嫌だった。

『そんなに怒らなくてもいいのに、ねぇ今週の日曜日空いてる?よかったらさ映画でも見に行かない?』

『んー、まぁいいよー』

『わかった予定は決めとくね!おやすみ!』

特に断る理由もなかったし早く会話を終わらせたかったから私は特に何も考えず適当に返事をした。あれ、そういえば私何か忘れているような、何か忘れちゃいけない大切な者...まぁいっか。思い出せそうになかったので私は寝た。


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