2話
果たして生まれ変わりというのはどのような現象なのか。実際に自分の魂というものをそれとなく理解した身としては、少なくとも今生においては別の赤ん坊を乗っ取っただの塗りつぶしただのと言った物騒なことは無かったと思うのだが。
新しい人生は柔らかいベッドの上で召使にお世話されて……などといった都合のいい生まれなどではなく、明らかに貧困層に近い僻地の寒村という言葉がぴったりの小さな村のぼろ屋であった。布で包まれて藁の上に寝る生活である。
もし一度でも熱を出せばそのまま捨てられるといわれても不思議ではない状況。何をどれだけどう好意的に見ても満足などという言葉とは縁遠い劣悪な環境でなんとか無事に育つことが出来たのは、運が良かったのか何処からか家に入れられる不思議な肉のお陰か。
……勘の良い人間ならわかりそうな話であるが、下手人は僕である。栄養価満点で母乳の出が良くなるという不思議効果付きのチキンをそれとなくきれいそうなところにポイするだけの簡単そうに見えるお仕事は、実際に両親が目の色を変えて貪っていた衝撃映像を除けば完璧であった。
自分でチキンが食べれるようになるまでは母親殿に万一があっても困ると続けていたものの、年齢の離れない兄弟がぽこじゃか量産されるのはチキンのせいもあったに違いないと思うのはのんびりよそ様を観察できるようになってからであった。
食糧事情のよろしくない筈の村で明らかにうちの両親だけ血色が良さそうに見えた時は実際ヤバいんじゃないかとも思ったが、実際どうやら近年は豊作が続いたらしくそこまで疑問視されている様子もなかった。なんなら村長宅の住人のほうが若干太いくらいだった。
簡単な言葉を覚えるころには血走った目の親に絶対に他人には肉の事を言うなとくぎを刺されるハプニングこそあったものの、その点中身は見た目に比べて社会というものがわかっている僕。村八どころで済むか怪しいお肉の独占は僕の口からは漏れない。
役立たずどころか無ければ死んでいたかもしれない能力に感謝しながらも、両親にすら内緒で自分用に調整した肉体改造チキンをかじる僕であった。