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六傾姫の雫~ルークィンジェ・ドロップス~  作者: にゃあ
Ⅰ ルークィンジェ・ドロップス
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018 対峙 ~荒鬼と虎に乗る少女~

「にゃあ様、イクスちゃん、どうしたの!?」

 ボスの目前なので声は潜めているが、サクラリアは聞かずにはいられなかった。


「イクスが、最初から敵だった可能性がある」

「どういうこと?」


「<柴挽荒鬼>をシバじゃなくてシヴァと呼び習わすことが不思議だった。まったく失念していたがな、イクソラとはシヴァ神に捧げられた花の名だ」


 これが仕掛けられた罠ならば、<邪眼師>龍眼に引き合わされたときからはじまっていることになる。<邪眼師>はこのことを知っているのだろうか。

 いや、イクソラルテアが名乗り出ただけで、彼には関係のない話かもしれない。それならば、ここにくるのは宿命だったということか。


しかし、イクスが何者かによって正常さを奪われている可能性がまだ残っている。<惑乱>状態なのだろうか。ゲーム時代の<惑乱>ならダメージを受けた時点で解除された。まだ、この世界でBSがどんな風にかかるかは桜童子たちにとって未知の問題なのだ。

逆にそうなるとイクスが何者によってバッドステータスを付与されたのかという新たな問題が出てくる。



「考えるのはよそう。とにかく目の前のボスを倒すのと同時にイクスの登場の警戒を怠っちゃいけない」



 ボスは大きな鬼だった。神楽のようなきらびやかな服はまとってはいないが、大きな剣を携えていた。

 <禊ぎの障壁>に入ったイタドリとヨサクが先鋒として突っ込む。イタドリが全ての攻撃を受けるためにヘイトを高めた。

 

 剣が振りかぶられる。

「ドリィ! きっちり受けろ!」

「ホラホラ、ばっちこーい!」


 ビルですら両断できそうな剣を、それに比べれば遥かに小さなハルバードで受けるさまは冗談のようだが、これが守護戦士の役目だ。その瞬間にヨサクが荒れ狂う柴巨荒鬼(レイジングシヴァ )の脇をすり抜け、大岩戸にたどりつく。

「タイガアァァァアァアアアエコォォオ」

 拳に力が集まる。


 荒れ狂う柴巨荒鬼(レイジングシヴァ )の左手に雷が集まる。


「あざみ!」

「むらくものぉぉおお!」


 落雷の大音声をあざみが切り払った。

「太刀!」

「フィストオオオオオオ!」

 大岩戸の一部に穴が開く。あざみは雷を無効化しているが硬直状態に入っている。ヨサクはあざみを横抱きにして、穴に転がり込む。



 大量のマーカーを設置しておびただしい投擲武器を放ち、状態異常を起こさせるバジル。

 <マエストロエコー>で火力を上乗せした蹴りで少しずつHPを削るユイ。

 シモクレンは<リターニングハンマー>で攻撃参加もしている。

 ディルウィードは雷を封印しているが、<アストラルバインド>で加勢する。


「冷気いける!」

 ユイの蹴りは、サクラリアの<虹のアラベスク>で冷気をまとっている。


「いくぞ、ウンディーネ」

 <エレメンタルレイ>で荒れ狂う柴巨荒鬼(レイジングシヴァ)の左目を射抜く。

「離れろ! ユイ! ドリィ!」

「セイクリッドウォール!」


 シモクレンの張ったドーム型の防御壁に全員が入ったのと、火焔による範囲魔法があたりを包むのは同時だった。ここまでは桜童子の読み通りだ。

 これを繰り返せば大きく削れるだろう。その間に洞窟のヨサクとあざみが依頼を完遂すれば自動的にこちらの攻撃は弱まるはずだ。


 その均衡を打ち破る存在が、イクスだ。


 ハトジュウが高く鳴いた。周辺警戒に当たっていたハギが叫ぶ。

「来ましたよ! 背後百メートル!」

 もう肉眼で見える。桜童子は舌打ちをする。


 現れたのは、八体の<柴挽荒鬼>を引きつれ、虎に騎乗する黒猫の少女。

 

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