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六傾姫の雫~ルークィンジェ・ドロップス~  作者: にゃあ
Ⅰ ルークィンジェ・ドロップス
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017 偵察 ~決死のハイザントイアー峡~

 <ハイザントイアー峡>は<エイスオ>の東にある渓谷型のダンジョンである。あまりの美しい景色に、イベントの発生していない時期にやってくる<冒険者>も多かったというほど、エルーダーテイル屈指の名所だ。

 

 イベントが発生すると、ゾーン一帯が霧に包まれる。視界のよいところがゴールとなっており、そこで目的を達成すると、ゾーンの霧が晴れるというパターンが多かったと桜童子は記憶している。


「バジル。<カグラデン>に大岩戸があったか覚えてるか?」

「ないな。マップが変わったってことじゃねえか」  


 校舎跡に立ち、ブリーフィングを行っている。ゲームと一緒ならば、ゾーン内で全滅した場合はここから全員リスタートするはずだ。



「厄介だな。探索能力のあるのが、リア、ハギ、ユイ、バジル」

「イクスもあるにゃよー。山丹に乗っかってればだけどにゃ」

「分かった。イクスはバジル組で頼む。じゃあ、リアとユイは川沿いに滝を目指して進んでくれ。ハギ、ハトジュウを出して川沿い組についてくれ」


「了解。じゃあ土地鑑のあるバジルさんにヤクモをつければいいわけっすねえ」


 ハギは<神祇官>で<式神遣い>である。式神の効果射程は至近なので術者から離れてしまえば効果はない。しかし、<ルークィンジェ・ドロップス>の影響を受けしゃべり始めたヤクモなら、その距離を伸ばせると考えてヤクモにこの石をもたせてある。


「うへへ。迷子になるんじゃねえぞ、お嬢ちゃん」

「バジル、カッコワルイ」

「うお、しゃべっただけじゃねえか」

「イクスはこっちについていけばいいにゃねー」  

 


 探索をはじめると桜童子のもとに念話が入ってくる。この中には<筆写師>のスキルをもつものがいないから、正確な地図が描けない。正確ではないが、桜童子は<画家>であるためかえって観光ガイドマップのような親しみやすい図ができる。


「どうやら、川沿いが正解だな。こちらに<カグラデン>も大岩戸もあるらしい。そこをボスが守ってるそうだ」

 

 サクラリアの報告を受けて、別チームの通信係であるバジルに念話を入れる。しかし、通話状態にならない。


「なぜだ。なぜ戦闘状態に入ってる!」


 桜童子は焦る。とっさにハギに念話を入れる。

「ハギ! ヤクモの様子はどうなってる!」

(はあ、はあ。イクスさんが! イクスさんが! 分からない! 何も見えない)


 桜童子は救出班を編成する。

「あざみ、レン、ディル! バジルの救出に向かえ!」

「俺もいくぜ」

「ヨサクさん、アンタはボス戦の要だ。おいらとドリィと残ってもらう」



 じりじりとした時間が流れる。

「リーダー!」

 シモクレンから念話が入る。

(バジルさんおったで! 今回復させてるとこ! ヤクモちゃんを守って、う、ズダぼろになってるわ。うぅ、イクス、おらへんねん)

 泣いているらしい。


「了解。気をつけて戻って来い」

   

 戻ってきた。

 大きな傷はもう治ったらしいが、まだ息が荒い。

「かは、ハア、ハアッ。あの猫娘、突然。ハア、斬りつけてきたんだ。この子はトラに襲われて、おい、大丈夫か」

「バジル・・・・・・カッコイイ」


 桜童子は立ち上がる。

「今からボス戦に臨む! 敵は荒れ狂う柴巨荒鬼(レイジングシヴァ)! イクスは敵の手に落ちたものと考えろ! バジル、お前は寝てるか」

「いやあ、やられっぱなしじゃつまんねえ」

「ヨサクさん、頼んだぜ!」


 ヨサクは雄たけびをあげる。霧の峡谷に響くような声だった。

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