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666×3 その2

作者: T3


第一話:声


 夜道。

 一昔前の常夜灯が放つ、薄暗く、どこか病的な印象を感じる黄色い光に照らされた裏路地。

 星に乏しい都会の夜空には、薄雲の狭間から見事な満月が、その白銀の円弧を覗かせている。

 本格的な夏が間近に迫った月の末、クライアントからの急な発注に応える為の残業の後、真夜中近くの路地を家に向かって歩いている。

「たすけて……」

 声が聞こえた。ほんの微かな、ともすれば足音に紛れてしまいそうなほどに微かな、女の子の声だ。

 辺りを見回してみたが、もちろん子供などいない。

「たすけて……」

 また聞こえた。だが今度は、聞こえてくる方向が分かった。

 目の前の分かれ道の左側。終わった選挙のポスターが張られたままになっている電柱の近く。

 近寄ると、明日が収集日の為だろう、ゴミが詰まった黒いビニール袋がいくつも置かれていた。

「たすけて……」

 僅かに大きくなった声に引かれて、黒い袋の間を覗き込むと、そこには古びて半ば壊れた人形が虚ろな目を向けていた。最近ではあまり見なくなった女の子用の玩具、何かの操作をすると仕込まれた声が出る『喋る人形』なのだろう。

「たす……」

 人形を取って胸を押すと、声が止まった。

 と、そのとき、ふと気づく。

 人形が軽い事に。そう、まるで、声を出す仕掛けなど入っていないかのように、軽い事に。

 確かめてみろ、と囁く自分の声を振り払って、人形を元の場所に戻す。

「たすけて……」

 背中で聞いたその声を無視して、再び家路をたどる。

 私の足取りは、何かに追われているかのように、早くなっていた。


*****


第二話:贈り物


「しかし、21世紀の前半頃って、ずいぶんと余裕があって、のんびりした世界だったんだな」

「そりゃ、人口が百億程度だったんだから、のんびりもしてただろうぜ」

「百億? たったの? 本当かよ、それ?」

「本当だって。俺も最初に聞いたときは信じられなかったけどな」

「しかし、百億って、きっと世界中、空き地だらけだったんだろうな」

「まぁ、まだ南極に人が住んでなかった時代だからな。でも、急にそんなこと言い出して、どうかしたのか?」

「あぁ、未来の俺たちにあんな贈り物を残せる世界って、どんなのだったのかな、なんて考えちまってな」

「おいおい、贈り物って。お前、何か勘違いしてないか。あれはそんなものじゃなくて、未来に解凍されて蘇る為に、自分から冷凍保存された連中なんだぜ」

「へっ? 何だいそりゃ?」

「だから、当時、不治の病気に罹ってたり、老衰で死にそうだった奴らが、将来の医学の発達に期待して自分から冷凍されたんだよ」

「何の為に? って……まさか、未来の俺たちが、わざわざ解凍して蘇らせてくれるなんて考えてたとか?」

「まぁ、そうなんだろうな。つまり、それだけお人よしな連中だったってことさ。でもな、そのお陰で、俺たちみたいな下級労働者も月に1度、肉が食えるんだぜ、しかも天然のな」

「それにしたって……。しかし、本当にのんびりした時代だったんだなぁ」

「さて、じゃあ、今月もその肉食う為に仕事頑張ろうぜ。今日の予定はどうなってた?」

「あぁ、南極点地下倉庫のT3A区画だな。50人入ってるらしい」

「了解。じゃあ急ぐとするか」


*****


第三話:ご要望にはお応えいたします


 はいはいはい、何でも取り揃えておりますよ。世界中の観光地への旅行、芸能人とのラブロマンス、当然その先もOK。美味しい物が食べたい、でも太るのは嫌? はいはい、お任せ下さい一流レストランは全て揃えております。えっ? そんなのじゃないですって? あぁ、はいはいはい、AV女優も一流所を揃えております、SM? もちろん、どちら側でも……。えっ? それも違うですって? 失礼しました、お客様も相当のツウですねぇ、いえいえいえ、私どももVR屋でございます、頭の中で描く願望は制限されるものでは無いとの信念で商売いたしております。では、ロリータ? スカトロ? レイプ? もちろん、双方向とも、五感の全てが実体験さながらの物を用意してありますが……あぁ……どうやら違ったようですね、では、どういった趣向を? えっ、強姦殺人……でございますか……。うーん……。おっと! まだお帰りにならないで下さい、分かりました、私どももプロでございます、お時間さえ頂ければご用意いたします。但し、それなりの料金は……えっ、はい、それは心配するな、と。承知いたしました、では一週間後でよろしいでしょうか? はい、確かに承りました。


 おい、今のヘンタイ野郎の注文聞いてたよな。まぁ、この商売やってると、いつかはあんなのが来るとは思ってたけどな。で、作れるだろうな? よしよし、時間はあるから、なるだけ美人を選んでやりな、それも顧客確保の一環ってやつだ。

 あっ、そうだ、この前のレイプ物の時みたいに、さらってきた女に感覚記録装置、着けるの忘れるんじゃねぇぞ。


別作品の宣伝です。


Pixivにて、こちらのサイトではシステム上、掲載が不可能なビジュアルノベルを作成しています。

1つの作品が完了しましたので、宣伝の為にここに書かせてもらいます。

タイトルは「末路」。18禁のファンタジー作品(所謂、剣と魔法)物で、全5話。ページ数は240ページ程度。ページ数は多いですが、画像が多く(100枚程度)、文字数は3万2千文字程度、です。

注意:18禁ものですので、ご注意下さい。

以下がリンクです。

https://www.pixiv.net/member_illust.php?tag=%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%AB


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