桜の木の下で眠るアナタ
桜の木の下に座って散っていく桜を眺めているミク
私はミクに駆け寄った
『ミク!』
散っていく桜を眺めているミクは儚くて今すぐに消えてしまいそうで怖かった
ミクは私が生まれる前から家族だったらしい
だからミクは私のお姉ちゃん的存在
ミクは私の声が聞こえたのか振り向いた
こっちに向かって走り出そうとしたのに急に立ち止まった
その時、車の音がした
驚いて音がする方を見てみると私の方にトラックが突っ込んできた
逃げようと思ってもカラダが動かない
頭の中では逃げないといけないってわかってるのにカラダが言うことを聞かない
あぁ、私死ぬのかな
私はそう思った
そう思うとお父さん、お母さん、そしてミクの顔が思い浮かんできた
ひとり娘の私をとっても可愛がってくれたお父さん、お母さん
生まれた時からいつも一緒にいたミク
目をつぶって考えていた
その時誰かに押された
驚いて目を開けるとミクが私を思いっきり押していた
その瞬間聞きたくない音がした
低く嫌な音だ
ミクがトラックに轢かれた
傷だらけのミクを見ているとミクとの思い出が次々と頭の中に蘇ってきた
私の...私のせいでミクが死んじゃうかもしれない
目の前が歪んできた
冷たい何かが私の頬をつたって地面に落ちていった
さっきまで凍ったように動かなかった足がミクに向かって動き出した
そしてやっとの思いでミクの近くまでたどり着けた
傷だらけのミクを私は抱き寄せた
『ミク...?ねぇ、ミク...ミクってば!!返事してよ!いつもみたいに元気な声聞かせて...?ねぇ、ミク!!』
私のせいだってわかってる
でも今の私は頭の中がグチャグチャでなにも考えられなかった
だからなのか分からないが私に近寄ってくる足音にも気づかなかった
『ミ、ク?』
お父さんの声だ
近くにお母さんもいる
二人共、私の近くに来て立ったまま呆然とミクを見ている
『何で?!どうしたの?!ミク!!』
お母さんは泣き叫んだ
私はいつもなら声を上げて泣いているけど今回は声を上げることさえ出来なかった
ミクはどんどん瞳を閉じていっている
そして目を完全に閉じる前にミクは笑った
ミクは静かに息を引き取った
私たちはミクが死んだことを受け入れられなくてミクを抱えたままミクの名前をずっと呼んでいた
その時ミクの声が聞こえた気がした
私たち人間にはミクの声が聞こえない
だけどこの時、この時だけはミクの声が聞こえた気がしたんだ
《香菜ちゃんが無事でよかった》
確かにそう聞こえた
後からお父さんたちにその事について言ってみると2人もそう聞こえたらしい
ミク、ありがとう
私を助けてくれて
私はミクの分まで頑張って生きるから
この桜の木の下で私たち家族を見守っていてね__