第6話 かぼちゃの悪夢
―――カラン、カラン、
と。金属同士が当たる音が聞こえた気がして、ふと気がつけば、ランドルはいつの間にかあの黒い通路に立っていた。
背後から揺らめく炎が、その影を通路に映し出している。
(なん、で……また……っ?)
ぎょっとして辺りを見渡すと、前回見た光景と違う点が幾つかあることに気付いた。
それは左右の壁に仮面が飾られていないことと、逃げなければと言う焦燥感がない――背後から熱気は感じるも、恐怖が沸き起こっていないことだった。
ただ、その代わり、背後に感じる熱気は以前よりも熱い気がするが。
「………」
あまりにも明晰夢過ぎて呆然と立ち尽くしていると、何処からか歌が聞こえてきた。
――――――
灯せ灯せ 炎を灯せ
照らせ照らせ 闇夜を照らせ
炎を掲げて その身に纏い
舞い踊りて 闇夜を進め
炎を広げて 闇を見通せ
潜み隠れる お化けを探せ
食われる前に 探し出し
炎で燃やして 食ろうてしまえ
――――――
その歌とともに鳴り響く金属音は、次第に大きく――確実に近づいてきていた。
それと同時に背中に感じる熱気も強まってきて、ランドルは、ごくり、と生唾を呑み込んだ。
未だに恐怖は沸き起こっていないが、近づいて来る〝何か〟への緊張は最高潮に達しようとしていた。
「―――おぉぉい、おいおい。こんなところで突っ立って、何してんだぁ?」
軽い、からかうような声に、びくりっ、と肩が震えた。
何故なら、〝声の主〟はすぐ近く――後ろに立っていると分かったからだ。
「アイツに見つかるぜ? さっさと、逃げて隠れねぇとなぁ!」
笑いを含んだ声に合わせて、カランカラン、と音が鳴り響いた。
ランドルは緊張で震える手を握り締め、ゆっくりと身体を動かして振り返った。
そして、見えたのは周囲を舐めるように広がった炎と――
「っ!?」
〝かぼちゃ〟だった。
一抱えはある大きさの〝かぼちゃ〟で、三角の目が二つと笑っているようなギザギザの口。その上には物語の中の魔女が被っているような三角帽子が置かれ、そこに黒いコウモリがとまっていた。
その身体はマントを纏っているので見えなかったが、床から数十センチほど浮かんでいる。
マントから出た手は白い手袋をしていて、右手にはアンティーク調のランプを持っていた。金属音はそのランプから――取っ手と本体が触れ合う音のようだ。ランタンの中で煌々と輝く炎は、どこか透明感があり、不思議な輝きを放っている。
そして、〝かぼちゃ〟に開いた目と口の奥にも、オレンジ色の炎が揺らめいていた。
「お……まえ、は……」
パクパク、と口を動かすものの、上手く声が出なかった。
突然、目の前に現れた〝かぼちゃ〟に対する恐怖より、平然と――世間話をするように話しかけられたことに、頭が追いついてこないのだ。
「ハハハハッ。お前、そんなんじゃあ喰われるぜぇ?」
笑い声に合わせて、カランカラン、とランタンが揺れて音を鳴らす。
「―――なっ……!」
驚くランドルを無視して〝かぼちゃ〟は頭を傾げると、ぴたり、と動きを止めた。〝かぼちゃ〟に目玉はないが、その眼孔から何となく感じる視線の先にあるのは――
「っ?!」
左の指先に、熱した鉄板に触れたような熱さと痛みが走り、ランドルは顔を歪めて小さく悲鳴を上げた。
弾かれたように左手を胸元に持ってきてぎゅっと握り締め、さらに右手で覆う。
ドクドク、と心臓が早鐘を打ち、いつの間にか詰めた息を吐いた。深呼吸を繰り返しながらゆっくりと手を開いて見れば、そこに火傷の痕は見つからなかった。指先に感じるじんじんとした痛みも、次第に治まっていく。
「……な、何だ……?」
混乱しながらも、ランドルは〝かぼちゃ〟と指先を交互に見つめた。
直感で〝かぼちゃ〟の仕業だと思ったが、その方法も理由も分からなかった。
「唾つけられていたぞ? これじゃあ来るさ」
「唾? 来るって………」
何が、とは続かなかった。
その言葉で脳裏に浮かんだのは、〝仮面〟だったからだ。
今朝、見た夢とザズの家からの帰り際に見たモノ――。
(あれは……夢だったんじゃ……?)
その、ランドルの思考を読んだように「ハハハッ」と〝かぼちゃ〟は声を上げた。
「もう既に〝劇場〟の幕は上がって〝主役〟は登場しているんだぜぇ? さらに、脇役たちも集まってきているしなぁ」
「……何の、ことだ?」
夢の中に現れた〝かぼちゃ〟と話している――その異常さに気付かぬまま、ランドルは〝かぼちゃ〟の言葉に耳を傾けた。
それは、あまりにも非現実的で理解の範疇を越えているため、聞こえて来た言葉にただ耳を傾けているからであり――無意識に聞かなければならないと思ったからだった。
「どうするかは、お前自身が決めろ。ただ喰われるか喰われる前に消すか、な――」
「っ?」
ぞくり、と背筋が震え、ランドルは息を呑んだ。
つい先ほど、聞いたばかりのあの歌が頭の中に響く。
「喰われる、前に……探せ?」
「ああ。探し出さなければ、喰われるだけだぜぇ?」
人なら、にやり、と嗤っているような口調で〝かぼちゃ〟は言うと、バッ、と両手を広げた。
カランカラン、と金属音が鳴り響く。
「何せ、お前はもう舞台に上がり掛けているんだからなぁ」
「そんな……こと……」
目を見開き、唇を震わせていると「んん?」と〝かぼちゃ〟は小首を傾げた。
「――んな、悠長なことは言ってられねぇぜ? もうあっちはお前を見つけているんだ。喰うか喰われるかしかねぇよ。弱肉強食――それが全てだぜぇ?」
ぐんっ、と顔を近づけられ、ランドルは後退った。
「っ……?!」
目の前にある三角の眼孔の奥――そこに灯るオレンジ色の炎が、よく見えた。
その中心にある〝何か〟も。
(………アレは……?)
ランドルはソレから視線を外すことが出来ず――魅入られたように見つめながら、〝かぼちゃ〟の声を聞いた。
「化けて、紛れて、探し出せ。そうしなければ、喰われて終わりだ」
ただ探せ探せ、と言う〝かぼちゃ〟にランドルは顔を歪ませ、
「探せって……探したとしても、俺には何も……」
そろそろ、と視線だけを下に落とすと、目の前から〝かぼちゃ〟が退いたのが見えた。
はっとして視線を戻すと、こちらに背を向ける〝かぼちゃ〟が目に入る。
「そりゃあ、どうにかするしかないだろ」
「っ……!」
突き放した言葉に、ランドルは息を詰めた。
分かっていたことだったが、その手立ては全くと言っていいほど思い浮かばない。
最悪の結果が脳裏を掠め、ランドルは唇を噛み締めた。そうでもしないと、泣き叫びそうになったからだ。
「けどまぁ――」
「……?」
続いた言葉に、いつの間にか俯いていた顔を上げた。
〝かぼちゃ〟は振り返り、ランドルと向かい合う。
「俺は悪霊を喰らう悪霊――《同属殺し》の〝ジャック・オー・ランタン〟。まぁ、気付いたら助けてやるよ」
「!」
えっ、とランドルは口を開けて〝かぼちゃ〟を見つめた。
「期待はするなよ?」
〝かぼちゃ〟は笑いを含んだ声で言い、不意にランドルとの距離を詰めてくる。
そして、ランタンを持たない左手をランドルに伸ばして来て――
―――とん……っ、
と。その指先が胸の中心に触れた瞬間、どくん、と身体の内側で〝何か〟が脈動したのを感じた。
「っ?!」
ランドルは後ずさって〝かぼちゃ〟から距離を取り、胸元の服を右手で握り締めるが、その脈動が止むことはなく――むしろ、強まっていった。
まるで、せき止められていた〝何か〟が溢れ出したように――。
(なん、だ……?)
次第に呼吸が荒くなり、身体の内側から熱くなってきた。
ランドルは我慢できずに身を折り、崩れるようにして地面に蹲る。
声も出せずに身体を丸めると、頭上から声が降って来た。
「じゃあ、頑張れよ――ランドル・コルフィッド」
何で俺の名前を、と思う間もなく、ランドルは意識を手放した。
「―――っはぁ……!」
びくりっ、と自分の身体が震たことで、ランドルは目が覚めた。
右手で胸元の服を掻き抱き、はぁっはっ、と荒い呼吸を繰り返す。まだ暗い中、呆然と上を見上げていると、次第に見慣れた自室の天井が見えてきた。
(〝かぼちゃ〟の、夢は――)
未だに身体は熱く、胸の中心にじんわりとした温かさを持つ〝何か〟があった。
脈動は感じないが、そこから生まれた熱さは全身に広がっていく。
(夢だけど……あれは………夢じゃ、ないのか……)
身体の内にある〝何か〟が、〝かぼちゃ〟との会話は夢の中で起こったことだとしても、現実の出来事だったと叫んでいる。
そして、〝かぼちゃ〟との会話から、あの〝仮面〟との遭遇も現実だと――。
(………けど、あの炎は一体――?)
〝仮面〟と遭遇した時、それを呑み込むように――守るように出現した紅蓮の炎は、一体、誰が放ったのだろう。
ランドルは目を閉じ、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。
(探す………見つけ、られた………早く、探さないと――)
〝かぼちゃ〟に言われた言葉が、グルグルと頭の中で回っている。
「……」
ふと、ランドルは左手を目の前に持って来ると、その指先に目を凝らした。
ザズの家で出来た刺し傷は、消えていた。
***
「まぁ、こんな感じかな?」
夜の帳が落ちたとはいえ、未だに人工的な明るさで照らされた町中。
明るい声を上げたのは、ブロジェイルから前方数メートルの位置に立つ〝かぼちゃ〟――ジオラが被っている三角帽子に腰を下ろしたエプリだ。
太陽の代わりに月が輝き、夜も更けて来た今の時間帯は、エプリの闇精霊としての〝力〟が最も高まっているため、その姿を見せていた。
「そうか? もうちょっと………こう、なぁ?」
一方、ジオラはユラユラと頭を左右に揺らして、あまり納得していない声を上げる。
その姿は昼間に見た人型ではなく、本来の――〝かぼちゃ〟の頭にマントを纏った姿だ。
手に持つランタンから煌々とした輝きが漏れていて、ブロジェイルはその光に目を細めた。
「―――お前ら、こんなところで何やってんだ?」
二人に掛けた声は、自分が思っている以上に呆れを含んでいた。
〝劇場〟に集まって来る悪霊を祓いに行ったはずだったが、何故、こんなところで油を売っているのだろう。
「おぉう。お疲れさん」
返って来たジオラの声は、軽い。
この間伸びた口調は昼間とは別人に思えるが、こちらが本来のモノだった。
(今は本能しかないからなぁ……)
エプリも振り返ると、「お疲れー」と言った。
子どもを見送った後、ブロジェイルはジオラたちと別れて町に分散している分身の破壊に向かった。
どうやら、本当に分身を作れるようになって間もなかったようで、〝劇場〟の力を吸い上げて数を増やしたのはいいが、内包する力は微々たるものだったので破壊は容易だった。
微かな臭いを追って順調に破壊していき、残りあと数体というところで、ブロジェイルは周りで露払いをしていたジオラたちの気配が町中に現れたのに気付いた。
(何やってるんだ? アイツは……)
本当に自由な奴だ。
少し気になって分身を全て破壊した後に駆け付けると、既にあの子どもの〝夢〟の中にいた。
そうなれば、ブロジェイルは干渉する術は持たないため、子どもの家の周囲を警戒しながら―― 一応、町の外の気配にも気を配りながら――帰って来るのを待ち、少しして、隣家の屋根の上にジオラたちが姿を見せたので声を掛けたのだ。
「何って、お前らがどうにかしろって言ったからやったんだぞ?」
ジオラは、やれやれ、と頭を左右に振った。
「いや、確かに言ったが……」
ブロジェイルは片眉を上げ、エプリに視線を向ける。
すると、肩を竦められたので、あちらもこういう解決方法を出して来るとは思わなかったのだろう。
他人が見る〝夢〟の中に入り込めたのは、ジオラの力ではなく、エプリの闇精霊としての力だ。
ただ、霊力に覚醒した者の中に入り込むとなれば、当人の霊力が抵抗して容易なことではないはずだったが――
(……まぁ、エプリなら問題ねぇか)
エプリは中位クラスの精霊だ。
元々、その〝力〟は強く、さらに〝力〟が増幅される夜なら――完全に覚醒した相手ではないので――押し入ることが出来たのだろう。
「………だが、覚醒の一歩手前まで後押しして、どうするんだ?」
ブロジェイルが気になるのは、その一点だけだった。
ジオラが〝夢〟の中で子どもに何をしたのかは分からないが、子どもに付いていた仮面の臭いは消え、ほとんど覚醒していると言ってもいい――いつ、完全に覚醒してしまうか分からない状態になっていた。
「んん? ご希望通り、もうアレには早々に手は出せないだろ?」
「それは……そうだが……」
痛いところをつかれ、ぐっとブロジェイルは言葉に詰まった。
半覚醒した子どもの霊力は何らかの理由で放出されることなく、辛うじて留まっている――身に纏っている状態なのだ。多少、不安定ではあるものの纏う霊力は高いので、ヘタに手を出せば痛いしっぺ返しを食らうのは、本能しかない悪霊でも察することは出来るだろう。
(相変わらず、突拍子もない事を……)
ブロジェイルはこめかみの辺りを指先で揉んだ。
子どもの霊力が半覚醒に至ったのは、十中八九、ジオラが〝夢〟の中に現れたから――悪霊との接触が原因だろう。
悪霊の霊力から身を守るため、半覚醒状態まで高まってしまったのだ。
「お前……一歩、間違えれば討伐対象だぞ?」
「あぁ? そんなヘマするかよ」
心外な、とも言いたげなジオラをブロジェイルは何とも言えない表情で見つめた。
その行動は、かなりグレーに近い。
(しかも子どもに自覚なし、か…………俺だからいいが、場合によっては査問会議ものだろ)
〝魔女〟の庇護下にいるとはいえ、ジオラの立場はかなり危いのだ。
〝魔女〟との契約によって高い理性を持つため、本能のままに〝現〟や〝闇〟の住人を襲うことはないだろうと判断され――何よりも〝魔女〟の関係者ということもあって――特例措置として《退治屋》の活動が認められていた。
だが、それは〝現〟と〝闇〟へ実害が確認された時点で、容易に《退治屋》から討伐対象に変わってしまうモノだったが。
現在、その特例措置が取られているのはジオラとそのストーカー1の二人だけだ。
それぞれに〝魔女〟の庇護下にいるため、その存在を危険視する声は大きくはなかったが、虎視眈々と〝その時〟を待つ者は少なくはないだろう。
(………頼むから、ストーカー2は呼ばないでくれよ?)
討伐対象となった時、真っ先にその前に現れるのは、ジオラのストーカー2だろう。
それは〝魔女〟と同類の――〝現〟と〝闇〟の狭間に在り、全てに等しく裁きを下す存在。
例え、ブロジェイルが状況を説明しようとしたとしても、相手は〝魔女〟と同格の存在――身を置く〝理〟が違うため、力ずくで押し切られればブロジェイルに止める術はなかった。
ただ、それは反対に言えば、ストーカー2から逃げおおせたことのあるジオラもまた、別の〝理〟に身を置いている証明になったが。
「ジェイル、大丈夫だって。キッカケと道筋を描いただけだから」
渋い顔をするブロジェイルの懸念が分かったのか、エプリがそう言って来た。
「………まぁ、上手くいっているようだが……」
半覚醒して高まった霊力が上手く流れているのは、ジオラがそうさせている―― 一種の暗示に近いモノを施したからだ。
己に課された、〝魔女との契約〟と似たようなこと――。
(やっぱ、グレーだなぁ……)
それは互いの名を交わして〝契約〟を結び、その内容を〝楔〟として刻むという方法だ。
〝楔〟として無意識下に深く穿たれた〝契約〟は、契約者の隅々まで染み渡り、半覚醒の霊力を暴れ狂う寸前で留め、その身を悪霊などから守っていた。
(あとでフォローしておかねぇと、やべぇな……)
自覚は、自ずとすることになるので、問題は今後のことだ。
どうしたものか、とブロジェイルが悩んでいると、ジオラは楽しげに言った。
「なら、結果オーライだよなぁ」
「………」
「………」
エプリとブロジェイルは顔を見合わせ、同時に「はぁ……」とため息をついた。
「で? そっちは、どうなんだ?」
その様子を無視して、ジオラは尋ねて来た。
ブロジェイルは片眉を上げつつ、
「………分身は全て壊した。俺も周りの悪霊を祓うよ」
「さっすが。早いなぁ」
「………」
「じゃあ、南の方は頼むぜ? 残りはこっちで回れる」
そう言ったかと思えば、もうココに用はないと言うようにジオラは夜の空へ浮き上がった。
ブロジェイルはその背に了承の声をかけ、
「―――エプリ」
と。その相棒の名を小声で呼んだ。
すると、飛び去るジオラから離れたエプリが「何?」と目の前に飛んでくる。
「どうしたの?」
「ジオラのタズナをしっかり持っていてくれよ? アイツ、結構危なっかしいし」
何となく、浮かれている――いつもより、本能で動いている気がした。
それは理性がある状態から本能で動く状態へ変わったところを目の辺りにしており、また、力が増幅される十月であるために霊力が高まっているからで、結局はいつもと同じなのだが、ふとした時に沸き起こってくる不安を拭いきることが出来ないのだ。
例え、〝ジャック・オー・ランタン〟は、その特殊性から悪霊でありながらも分別はあり、魔女との契約のこともあるので、そうそうに〝もしものこと〟はないと分かっていたとしても――。
「うん。分かってるよ」
エプリはくすくすと笑い、
「ジェイル、この時期に一緒になるといつもそう言うよね?」
「それは……」
うっ、と言葉に詰まった。
ジオラとは、ブロジェイルが《退治屋》になる前からの付き合い――偶々、ジオラの《退治屋》の仕事現場に居合わせたことが縁で知り合ったのだ。
それから、何度か顔を合わせているうちに友人になり、ブロジェイルは《退治屋》を目指し――そして、今は信頼できる仕事仲間になっていた。
少々癖は強いが、ジオラの性格は嫌いではなかった。
「大丈夫だよ。いつものことだし」
「……あの子どものことも、か?」
じと目を向けると、エプリはにっこりと笑うだけだった。
それだけで察して、ブロジェイルはため息をついた。
(全く、アイツは………)
「おぉーい。置いてくぞぉ」
「はーい」
じゃあね、と手を振って、エプリはジオラの後を追った。
「ああ………」
ブロジェイルは、しばらくの間、夜空に消える二人の背中を見送っていたが、「行くか……」と呟いてジオラとは反対の方角へ向かった。




