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襲撃

「げっ、フレイア……」

 振り向くと、そこには幼馴染であるフレイアが満面の笑みで立っていた。

「ちょっと何よその態度! せっかくアベルが騎士団長になったって聞いたからお祝いしに来てあげたのに!」

「あ、ありがとう、フレイア……いや、フレイア姫」

 フレイアは俺の幼馴染でもあるが、その前にこの国の姫でもある。俺の家は代々騎士の家系であり、王様との親交も深い。そのせいか、フレイアとも幼い時から親交があり、姫と騎士という立場になった今でもこうして気取らないで話すことができる。

「姫はやめて。それよりすごいじゃない! あのグラハムを差し置いて騎士団長になるなんて、流石アベルだわ!」

「い、いや……それには色々と訳が……」

「訳なんていいのよ、結果が全てよ! ……これで、私たちの夢に一歩近づいたわね」

「……まだ覚えてたのか」

「当たり前よ。アベルだってそのために騎士になったんでしょう?」

 フレイアが金色の長い髪を耳にかけつつ、緑色の目を細めて笑う。幼い頃から、フレイアは本当に嬉しい時にいつもその仕草をする。多分俺だけが知っている癖だ。

 夢、か。幼い頃にしたあの約束をまだ覚えていてくれるとは、嬉しいような、むず痒いような……。勿論、俺だって今まで一度たりとも忘れたことはないけれど。

「あのー、さっきから話してる夢ってなんですか?」

 今まで黙っていたキルシュが唐突に口を挟む。気を使ってか、それとも恐れ多いのか、いつも俺とフレイアが話している時には黙っていることが多いのだが……今回はどうしても気になったようだ。

「アベルに聞いても教えてくんないんですよ」

「いやそんな、話すような内容じゃ……」

 俺が慌てて止めようとすると、その前にフレイアの言葉が重なる。

「まぁアベル! 貴方教えてなかったの? 仕方ないわね私が話して……」

「フレイア、いいから話さなくて、ほら、大した内容じゃないし……」

 今度は俺の言葉がフレイアの言葉を遮る。何とか話すのを止めようとしての行動だったがどうやら逆効果になってしまったようで、みるみるうちにフレイアの頬が膨らむ。

「……大したことなかったら話してもいいわよね! 皆も聞きたいでしょう?」

 フレイアの言葉に頷くキルシュとシード。お前たち、後で覚えておけよ……。

「ふふ、私たちの夢というのは……」

「馬鹿、やめ……」

突如、轟音と共に目の前の壁が崩れ爆風が巻き上がる。

「きゃあっ!!」

「何だ!?」

砂埃と壁の破片がすさまじいスピードで襲いかかり、俺たちはその場で何とか衝撃に耐える。

衝撃が収まった頃に顔を上げると、目の前には信じられないものが居た。

「何だ、これは……」

そこには人間の何十倍の大きさもあるだろう異形の化け物が、真っ赤な目をぎらつかせこちらを睨んでいた。

これは、一体……この化け物が、城の壁を破壊したと言うのか?

「うわぁ!? 化け物だぁ!!」

キルシュが腰を抜かしその場にへたり込む。その大声に反応したように化け物の視線がぎょろりと動く。

「キルシュ!しっかりしろ!シード、キルシュを頼む」

無言で頷きキルシュを守るよう前に立ちふさがるシード。

「フレイア、無事か!?」

「え、えぇ何とか……」

 フレイアは砂埃にまみれてはいるが、特に目立った外傷もなさそうで安心する。

 改めて目の前の化け物に目をやると、ふと、あることに気付く。初めて見るはずのこの化け物に、既視感があった。一体、どこで見たのか……確かあれは、フレイアと……。

「アベル!」

 フレイアに呼ばれハッとする。化け物を見ると、完全にこちらを獲物と捕らえ、今にも襲い掛かってきそうであった。

 詳しく考えるのは後だ。今はとにかくこの状況を何とかしないと……!

 俺は腰の剣に手を添え、化け物が動くと同時に抜く。

「……っうおおおお!!」

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