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「じゃあ、お砂糖が焦げやすいこともご存知ない方が多そうですね。」
「ええ。それどころか、加熱調理に使用可能だと知らないかもしれませんわねえ。」
ウジャータさんのため息のような返事に驚きで声も出ない。
いやいや。料理にお砂糖って基本でしょうに。
って、そっか。ここでは甘辛ソースに使う甘味も、エルフの開発した『ミリン』なんだっけ。
う~ん。じゃあ、本当に基本の基本からお話した方がいいんだろうなあ。
「なら、お砂糖を使ったソースを作って、実際にどう溶けるか見てもらいましょうか?少し苦味のあるソースなんですが、プリンとも合いますし。あ、プリンは…。」
『深緑の森の一族のスイーツですが知ってますか?』と続けようとした私の言葉に、ウジャータさんがかぶせてくる。
どうやら知ってたようだ。さすがウジャータさん。
「あらあら、まあまあ。プリンに合うソースですの?それは存じませんでしたわ。」
でも、カラメルソースは知らないんだなあ。
まあ、あれはお砂糖が無いと出来ないし、そんなことしなくても多種多様な蜜があるもんねえ。
「ええ。ほんの少しだけ焦がして、甘過ぎない味に抑えるんです。」
「まあ。では、もしよろしければ、作って見せていただけないかしら?お話だけでは何ともお返事が出来ませんわ。」
「そうですね。私も久しぶりなので。作ってみたいです。」
あれって、ちょっと焦がし過ぎるだけで苦い汁になるもんねえ。
本当に人前でやるとなったらもっと練習が必要だなあ。
ウジャータさんにお願いして、フライパンにお水と一番精製したお砂糖を1:2で入れ、かきまぜずにじっと我慢。とにかく我慢。
火は強くてもいいけど、色がついたらあっという間に焦げ付くから、久々の今回は中火でチャレンジ。
沸騰してきて、端から色がついて来たら勝負開始。
フライパンを回して全体を混ぜていく。
こなったらすごい速さで色が着くので、好みの色になるちょっと手前だと思ったくらいが、私の火の降ろすタイミングだ。
降ろしたフライパンに、最初に入れたのと同じくらいのお水をそおっと注いで、ゆっくりとフライパンを回して馴染ませれば完成だ。この時、ソースがかなりはねるので注意。
いろいろな作り方があると思うけど、我が家はこのレシピ。
最後に水を注ぐのが決め手です。お湯を使う人もいるみたいだけど、うちでは水。
お母さんは『沸かすのが面倒』って言ってたけど、効果はそんなに変わらないと思う。
こうすると固まりにくくなるんだよね。
あー兄ちゃんは風味づけにお酒を混ぜたお水を使うのを好んでたけど、あれは好みがわかれるからなあ。
お砂糖とお水の割合はひとによると思うけど、うちは甘すぎない味が好まれるので、お砂糖は少な目だ。
さて、出来た。
以外と身体が覚えてるものなんだなあ。
「まああ。香ばしい甘い香りが立ち込めてますわあ。」
「甘すぎる…。」
あらら。クルビスさんにはキツかったみたい。
反対に、ウジャータさんは目をキラキラさせている。
「もう少し冷めたら味見しましょうか。甘いけど苦いですよ?」
保険で先に言っておく。
初めての味だろうし、何より単体で味わうものじゃないから、苦味に驚くだろう。