11(クルビス視点)
しばらく、先見の内容で悩んでいたが、わからないものに悩んでいても仕事は減らないと思い直す。
目の前の山積みの書類が先だ。
半分は減らさないと、明日の業務に支障が出てしまう。
それではハルカを迎えにいけないからな。
これは俺の決めた目標だが、ハルカを迎えに行くまでに大抵の仕事は終わらせるようにしている。
もちろん、全て終われば理想的だが、もめ事や犯罪というのは増えることはあっても減ることはないからな。
だから、俺の机には処理した端から次の問題が追加されていく。
目安として、8割処理出来ればその日の執務は終わりとしている。でなければキリがないからだ。
前は寝る寸前までやっていて、シードからよく「やり過ぎだ。」と注意されていたものだが、今ではハルカといる時は仕事はしないから『仕事量』というものを意識するようになった。
それをハルカに言った時は口を開けて驚いていたな。
その後、「ワーカーホリックにも程がある。」と言われたが、どういう意味かは教えてもらえなかった。まあ、仕事のし過ぎという意味だとは思うが。
「おい。クルビス。そろそろ鐘の時間じゃね?」
「ん?ああ。もうそんな時間か。…ぎりぎり半分かな。」
「半分つっても、やってるのは普段より多いって。ほら、行ってこいよ。」
シードに指摘されて、鐘が鳴る時刻まであまり猶予がないことを知る。
手元を見て目標が達成できたと言えるか首を傾げていると、シードに早く行けと追い出された。
ずっと机に向かっていたから、身体がきしむ。
少しほぐすと、急いで転移局に向かった。
少し急ぎ目に向かったからか、到着した頃に鐘が鳴った。
ゆっくりと中をのぞくと、帰り支度の済んだハルカが出迎えてくれる。
「あ。クルビスさん。お迎えありがとうございます。」
今日は残業かもしれないと言っていたが、どうやら定時で上がれたようだ。
他の局員に挨拶をして、手を繋いで帰る。
「ふふ。待たせることにならなくて良かった。」
「ずいぶん早く終わったんだな。」
「ええ。実は荷物があんまり多かったんで、視察の方に手伝ってもらったんです。」
予想が当ったな。
視察の者が手伝わなければならない程の荷物が来たということは、ここの流通量はとっくに術士2つの力量を超えているということだ。
だから、昼で帰って、見直しをすることになった。
報告にあった、視察の男が勤務に実直というのは本当だったようだ。
いままでの対応なら、『相応の流通量』で片づけられていただろうな。
今度会った時に、父にも教えよう。あの転移局のことはとても気にしていたから。