9(クルビス視点)
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「…帰った?まだ昼だろう?」
「そうらしいぜ?何か慌てて帰っていったみたいだけどな。詳しいことは中にいた奴にしかわからないらしい。」
シードの報告に首を傾げる。
今日はハルカの勤務する転移局に視察が来る日だ。
ハルカ目当てだろうと思って調べさせたが、勤務には実直らしく、横柄な言動が目につくぐらいの男だった。
付添いの女性は局長の秘書らしく、目付け役が同行してるなら問題は無いと思っていた。
まあ、一応、ハルカにも男の横柄な言動を丁寧に伝えて、何を言われても気にしないようにアドバイスしておいたが。
それが、昼になって慌てて帰った?何があったというんだ。
「気になるなら、様子を見に行くか?」
俺の様子を見て、シードが提案してくれる。
視線をたどると、不機嫌そうに揺れる尻尾があった。
「…。いや。悪い状況なら、そう報告があるだろう。慌てていたのは気になるが、帰ったのなら問題はない。」
「まあ、お前がそれでいいなら、いいけどよ。そんなら、とりあえず、メシにしようぜ。」
シードに誘われて、食堂に降りる。
シードは俺がハルカの仕事の邪魔にならないように自重してるのを応援してくれていて、さっきのように、こまめに警護の報告をまとめて報告してくれている。
派遣術士の話なんかは教えてもらって本当に助かった。
最初に情報だけ聞いていたら、部下にあたってしまったかもしれない。
「よお。」
降りた時に外からキィが返ってきた。
また外に行っていたのか。今日のキーファの機嫌は最低だろう。
外をふらついては街の情報を集めてくるキィは、どこか嬉しそうだ。
何かいい情報でもあったのか?
「いやあ。いいこと聞いてよお。中央局の偉いさんってやつに広場で会ったんだけどな?北西の転移局、見直しするってさ。」
ああ。そうか。
キィが小声で押してくれた情報を聞いて、先程の報告に納得がいく。
おそらく、報告されてた情報と実際の流通量に差があったんだろう。
だから、一通り荷物の集まった昼で帰ったわけだ。
もしかしたら、急な視察もそれを確かめるためのものだったのかもしれないな。
今ならハルカの事があるから、いくらでも言い訳が出来る。
キィが聞いてきたなら、見直しは確かなことだろう。
少しでも改善されることを祈るばかりだ。