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「クルビス隊長の存在がかえってウワサに拍車をかけてしまったようですね。ドラゴンの血筋の伴侶への執着は有名ですから。でも、来てみたらハルカさんは楽しそうに働いているし、うちの流通量は聞いていたのと違ったみたいで戸惑ってましたねえ。」
楽しそうに話すカイザーさんは、あの視察のイグアナの男性とは知り合いみたいだなあ。
話してる感じが顔見知りって程度じゃなかったし。
「まあ、でもこれで、少しはいい方に向かうでしょう。ギガ殿が来てくれて助かりました。」
「助かるですかぁ?あんなに魔素をまき散らすひとぉ。来てもらっても困りますぅ。」
近くで魔素を浴びたキャサリンさんは、カイザーさんの意見に懐疑的だ。
まあ、いいひとには見えなかったよね。
「ええ。彼はお父上の築き上げた今の転移局のシステムをとても尊重しています。その中には、『流通量に見合った転移局のランク分け』というのも含まれています。今のうちの状態はそのシステムから外れてますから、少なくとも、小規模転移局という情報は訂正されると思いますよ。」
成る程。お父さんを尊敬してるなら、今の北西の転移局の状況は我慢できないだろう。
プライドも高そうだったし、やるならきっちりやってくれそうだ。
「でもぉ、またどこかでもみ消さりされませんかぁ?」
キャサリンさんの発言にデリアさんと私はギョッとする。
もしかして、過去に何かをもみ消されたことがあったのかな。
「いいえ。それはないでしょう。ギガ殿は慎重な性格ですが、動くときは迅速に的確に動きます。転移局の規模を変更するとなったら、内外に知らせるでしょうから、無かったことには出来ませんよ。」
ふうん。ずいぶん信頼してるんだ。
友達って雰囲気でもなかったけど、お互いのことは理解してるんだ。
「彼とは学校も職場もずっと同期でしたけど、いつも真っ直ぐでしたね。調べ直すといったなら、きっちりかっちりやってくれると思いますよ。」
ああ。学校も職場もずっと同期なのかあ。
じゃあ、もう幼馴染みたいなものだ。
こっちの子供は少ないから、日本みたいに同学年でクラスが違うとかもなく、1クラスで人数も10人前後だ。
友達とまではいかなかったとしても、長い付き合いでお互いに性格なんかはよく知ってるだろう。
そのカイザーさんが言うなら、きっちりかっちりやってくれそう。
キャサリンさんもホッとしたようだ。
「そういうことなら、期待しちゃいますぅ。規模が変われば、申請も通りやすくなりますしぃ。」
「そうですね。ただ、まだ決まったことではありませんし、邪魔をするものもいるでしょう。しばらくは、ギガ殿が調べ直すと言ったことについては、内密にお願いしますね。」
「「「はい。」」」
カイザーさんのシメに全員で頷く。
うん。大変だったけど、少しは運が向いてきたみたいだ。