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「ふふ。気に入ってもらえて良かった。はい。これ。お祝いですよ。今日は3つになる初日ですよね?外で食べられるなんて幸先がいいじゃないですか。」
幸せに浸っている私たちに食堂の女主人のメロウさんが果物の小皿を持ってきてくれた。
この辺りの顔役である旦那様のビドーさんから、今日から転移局で私が働くことは聞いているらしく、喜びの魔素でお祝いしてくれた。
キャサリンさんとカイザーさんも笑顔で頷いている。
キャサリンさんは「ひさしぶりに床が見えたんですよ~。」とまで言って、笑いを誘っていた。
「ホントに良かったわ。これから荷物は増える一方ですもの。忙しくなるでしょうけど、また来てね。頑張ってもらうために魔素一杯の料理をサービスしますから。」
茶目っ気のあるウインクと共にメロウさんが応援してくれる。
それにしっかり頷いて、サービスで頂いた果物をいただくことにした。
大満足な昼食を終えて、さあ、午後の仕事に戻りましょうかという頃、ちょっとした騒ぎが起こった。
やだ。喧嘩?
「お前のせいだろ!」
「んだとお!おめえの腕が悪いんだよ!」
入口に近い席で口論になっているようだ。
私の護衛のひと達がさっと囲んでくれたから、それ以上のことはわからない。
でも、ぱっと見えた淡いピンクと淡い黄色の体色の組み合わせは、どこかで見たことあるような?
キャサリンさんやカイザーさんはやれやれといった様子だ。
「またですか~。」
「今日は何でしょうねえ。あのふたつ。」
知り合いみたいだ。
周りも落ち着いてるし、いつものことなのかな。
そういえば、前にもこんなことあったなあ。
そうそうクルビスさんと一緒に…。
「んだとお!やるか!」
「おお!やってやらあ。今日という今日は勘弁ならねえ!」
え。何だか不穏な感じじゃない?
キャサリンさんもカイザーさんも不安そうだ。
「あれ。不味くないですか~?」
「そうですね。今日は様子がいつもと違うようです。」
それを聞いた私は傍にいた警護のひと達にお願いした。
警護から外れられないだろうから、こういう形で。
「あの。あのふたつを呼んできてもらえますか?知り合いなんです。」
不思議そうなキャサリンさん達にうそじゃありませんよとにっこり微笑んでおく。
思い出したんだよね。あのふたりは私が転移局に入るきっかけになったひと達だ。