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「視察って、私が入った時にあったばかりじゃないですかぁ!早すぎますよぉ!」
キャサリンさんが叫ぶようにカイザーさんに意見する。
どうやら、今回の視察の話は通常ならあり得ないことみたい。
キャサリンさんが入った時なら2年程前かあ。
確かにちょっと早いかも。
この街の転移局って結構な数があるから、そうそう回ってこないよね。
何でそんなことになったんだろう。
「それに、各地区順番でしょう?今度は南地区のはずですよ。ピーコ局長もそれを気にしてましたし。」
デリアさんもキャサリンさんに同意している。
やっぱり早いんだ。
ていうか、南のはずなのに北地区のうちに来るって。
嫌がらせにしか聞こえない。
「そのはずなんですが、ここにしっかり書いてあるんですよ。しかも日程がこれです。」
ため息をつきながらカイザーさんが書類を見せてくれる。
確かに、北地区、北西の転移局って書いてあるけど、え、この日時って。
「8日後って、そんな急に…。」
自分で言ってて言葉に力が入ってないのがわかる。
だって、特別営業期間が終わってても、まだまだ忙しい時期だ。
視察っていうか、完全に嫌がらせじゃない。
中央局も忙しいでしょうに。
「嫌がらせですぅ!帰ってくる作品であふれてる時なんてぇ!難癖つけて、ハルカさん引き抜く気ですよぉ!」
キャサリンさんも同じことを考えたみたいだ。
でも、私の引き抜くって、まさかこの視察って。
「その可能性が高いですね。ハルカさんがいらしてから、うちの流通量は跳ね上がってますから。ハルカさんの術士としての能力を確かめたら、引き抜く話を持ってくるつもりでしょう。」
ええ。私のせいっ?
うわあ。こんなとこで迷惑かけることになるなんて。
いくらなんでも仕事が忙しい時期には何もしてこないだろうって思ってたのに。
思った以上に転移局ってやばいそう。
「すみません。こんなに忙しい時に。」
「ハルカさんのせいではありませんよ。大方、あのバカ坊が何か馬鹿なことを言い出したんでしょう。この時期の視察なんて馬鹿なこと言い出すのはあいつしかいません。」
「まさかぁ。」
「アーバンさんですか…。」
どうやら、視察に来る人について3人とも心当りがあるようだ。
すっごく嫌そうなのが、表情だけでなく魔素でもヒシヒシと感じる。
そんなに嫌な人なの?
まあ、でなきゃ、こんな時に視察になんてこないか。