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そうこうしてるうちに、お客様が増えてきたので、クルビスさんにお礼を言って帰ってもらって、またお仕事を再開する。
今日からは遅くまで開いてると知ってるからか、夕方のラッシュが終わってもお客様は途切れないままだ。
そのせいか、特別営業期間は朝から晩まで転移陣は稼働しっぱなしだというのに、転移陣の前に積みあがっている荷物の山は全く減ってるようには見えない。
もし、これで、通常営業だったらどうなってたんだろう。
…やめよう。仕事が嫌になっちゃう。
それにしても、やっぱり魔素の補給って大事だなあと、今回のことで痛感。
特に、今日からは転移陣を使う回数も多くなってるから、いつもより魔素の消耗が激しい。
最近は出来てなかったけど、おやつ休憩は交代でも入れれるように出来ないかカイザーさんに相談してみよう。
こんなのが毎日続いたんじゃあ、身体が持たない。
これが3人だったらどうなってたんだろう。ぶるる。
「カイザーさぁん。中央局から書類で~す。」
一緒に荷物の山を仕分けていたキャサリンさんが、一通の封筒を見つけてカイザーさんに手渡す。
中央局って、中央地区にある転移局の本部のことだっけ。
カイザーさんは笑顔で受けとって、カウンターの下の棚に入れてしまう。
「緊急!即開封!」って文字が見えたけど、すぐ見なくていいのかな。
気にはなったものの、次々積まれる荷物に気づき、慌てて仕分け作業を開始する。
これが終ったら、最終で荷物を送る作業が待っているから、余計なことを考えてるヒマはなかった。
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「うう。これで最後の荷物、ですぅ。」
日もすっかり落ちた頃、ようやく荷物の整理が終わった。
うめくキャサリンさんと一緒に荷物を転移陣に運んで、魔素を流し込み、送り出す。
この頃になると、転移陣も一つだけにして、交代で魔素を流し込んでいた。
そうしないと、明日が持たないと判断したからだ。
差し入れの金平糖が無かったらヤバかった。
小さいから、口に放りこんで転移陣を操作できるので、適度に魔素の補給が出来て助かった。
クルビスさんにも帰る時にあらためてお礼言わないと。
最後の荷物が無事に送られたことを確認すると、ようやく一息つける。
「お疲れ様です。今年は出品作品が多いようですね。去年の1.5倍くらいに増えているようです。」
疲れた様子で書類を確認してるカイザーさんから、衝撃の事実が明かされる。
今日だけで5割増しですか。明日はどうなるんだろう。
「うわあ。どうりで多いと思いましたぁ。去年はここまでじゃありませんでしたもんねぇ。」
「今年はどこも荷物が多いだろうと予想されてましたが、その通りになりましたね。」
キャサリンさんもデリアさんもうんざりした顔で話している。
どこも荷物が多いってことは、大きなコンテストの出品作品を受け付ける中央地区はすごいことになってるんだろうなあ。
「これは…。」
書類を確認していたカイザーさんが、珍しいことに顔をしかめて書類を見ている。
どんな内容なんだろう。キャサリンさん達も気づいたようで、様子を見守っている。
「あまりいい知らせではありませんが、今度の中央局からの視察先がうちになりました。」
「ええっ。」
「そんなまさかっ。」
キャサリンさんとデリアさんは目を見開いて驚いている。
え。視察って、偉い人が来るってこと?この忙しいのに。