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お昼休みが終わるころには、お客さんが並ぶようになった。
さすがにお昼休み中は誰も来なかったけど、12時になった途端、飛び込んできた。
「これ!大至急!」
淡い緑の体色のヘビの一族の男性だ。
随分若いように見える。それにしても…。
これじゃわからない。
代金だけ置かれても困る。
送り状もないし、せめてノートくらい書いて欲しいなあ。
宛先どうしろっていうのよ。
「送り状は…。」
「え?やってくれよ。」
いらっ。
いやいや。お客様にもいろいろ事情が。
「ダリタンのコンテスト当てだから、よろしく!」
そのまま出ていこうとするお客様。
いや、ちょっと待って。
「お待ちください。お客様。送り状を書いていただけませんと、正確に目的地に荷物を送ることが出来ません。」
慌てて引き留めようとすると、やり取りを見ていたらしいカイザーさんが帰ろうとするお客さまの前に立ちはだかって止めてくれる。
助かった。私じゃ捕まえられなかっただろう。
「だから、ダリタンのとこに送ってくれればいいんだよ。あそこは近くの転移局に着けばいいんだろ?」
確かに、大きい大会の場合、大会名さえキチンと書いておけば、荷物は届く。
でもね?それは街の外からの出品に対しての措置であって、街の住民に対するものじゃない。
しかも、中身の情報も言わなかったし。
大きな大会になると、競う対象もタペストリーや染めなどいくつもの部門があるから、中身の記入は必須だ。
だから、出品者はきちんと送り状を各ものなんだけど…。
このひと、もしかして出品したことないの?
「大きな大会では、出品作品は中身の記入が必須です。それも規定の内容が記入されていませんと出品扱いにはなりません。」
カイザーさんが丁寧に説明するけど、相手はまだ納得していないようだ。
いらいらした様子で足を動かしている。
その騒ぎに、入口に来ていた他のお客様も遠巻きに見ている。
このままだと、業務に支障が出そうだ。
「ああ!?規定なんて知らねえよ!俺は転移局持っていきゃ出せるって聞いたんだ!」
問題の青年はとうとうカイザーさんを怒鳴りつけた。
手は出さないつもりみたいだけど、とてもイライラして、魔素も不安定に膨れ上がっている。
様子がおかしい。
どうしよう。カバズさんみたいになったら。
「どうしました?」
私を警護してくれてる隊士さんが顔を出す。
少しは話を聞いてくれるだろうか。
「てめぇ!隊士呼びやがったな!」
周囲がホッとした途端、問題の青年はカイザーさんに腕を振り上げた。
いけない!