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私が詳しいことを聞き出そうとすると、青紫の塊が目の前にドンッっと置かれた。
え。何、この食欲をそそらないものは。
「「お待たせしました~。本日の冷製パスタで~す。」」
ベッカちゃんとフルールちゃんが注文した料理を運んできてくれたらしい。
私でも一抱えするくらいの大きいお皿に山盛りのパスタが盛られていた。
ふたりとも小さいのによく運べたなあ。
ふたりはそのまま取り皿とフォークをカウンターから受け取って、テキパキと並べてくれた。
疲れた様子もないし、慣れてるのか動きも軽やかだ。
ヒト族とは身体能力が違うっていうのを、こういう時に実感する。
自分がこのふたりくらいの時って、こんなにちゃんと働けたかなあ?
…無理だろうなあ。途中でばてて泣いちゃってたかも。
「ありがとうございます~。さあ、取り分けますよ~。」
「美味しそうですね。ピケのパスタですか。もう夏ですねえ。」
どうやら、目の前の色鮮やかな青紫のパスタは夏のメニューらしい。
何でも、この時期だけ取れる穀物で作られていて、ある魚の卵を使ったソースと絡めることで麺もソースも青紫になるんだとか。
取り皿に分けてもらったパスタは丸くこんもりと盛られていて、色も相まってアジサイに見える。
アジサイのパスタかあ。そう思うと食べられそうだ。
「い、いただきます。」
手を合わせて食べると、口の中に海の幸の香りが広がる。
あ、これってシーフードパスタだ。ソースはさっぱりとしたクリーム系。
小さく切られたイカっぽいのや、エビっぽいのがいい食感だ。
ソースの色の驚いて気づかなかったけど、具の中には貝もあるみたいだ。
あさりとハマグリの中間みたいな貝だけど、肉厚で食べごたえ十分。
食べ始めたら、一気に食べてしまった。おかわりしよう。
「美味しいですねえ。」
「ええ!久々に食べましたけど、やっぱりここのパスタは絶品です~。」
「本当に。お忙しいでしょうに丁寧に作って下さってますねえ。」
あんまり美味しくて、3人でニコニコしながらあっと言う間に大皿も空にしてしまった。
クリーム系ってこってりしてるイメージだったけど、これは豆乳でも使っているのかさっぱりしていた。
熱帯で食べるさっぱり系冷製パスタはとても美味しかった。
色がすごいけど、これ開発したひとはもっとすごいと思う。
これもパスタをエルフに広めてくれてたあー兄ちゃんのおかげだなあ。
異世界でも食事が美味しいってほんと幸せ。