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その後も荷物は途切れなくて、お昼休憩も交代で買ってきた物を食べるのが精一杯だった。
ちなみに、お昼は近くのお店の方々が差し入れして下さった。
「すげえ並んでたなあ。」
お式の時、クルビスさんと回った屋台で一番最初に声をかけてくれたおじさんだ。
名前はケルカさん。大きな体格をしていて、体色は明るい灰色。
屋台越しで話した時はわからなかったけど、トカゲの一族だった。
気さくなおじさんで、私たちを見かけると必ず挨拶してくれる。
「ええぇ。この時期は多いですけどぉ。今日は特別多かったですよぉ。」
「締切が明日のコンクールもあるからなあ。ぎりぎりで駆け込むやつが並ぶだろう。ほらよ。どうせ、外に食いに行くひまもないだろう?」
「助かります。ケルカさん。買いに行くのもおっくうで。」
ケルンさんが焼き鳥のようなものを差し入れてくれる。
それにカイザーさんがお礼を言う。
「美味しそう。ありがとうございます。」
いい匂いだ。
焼き鳥なんて久々だなあ。
「ありがとうございます。」
「わあ。おじさんのググ、久しぶりですぅ。」
焼き鳥はググと言うらしい。
珍しそうに見るデリアさんと、目を輝かせて見るキャサリンさんが対照的だ。
「おうよ。おめえもちったあ食いに来い!うちは1つからでも売ってんだからよ。」
「そんなことしたらぁ。弟たちに匂いでバレて、すっごく文句言われますよぉ。」
おじさんの文句にキャサリンさんが顔をしかめて言い返す。
キャサリンさんは双子の弟さんがいて、その子たちが成長期でよく食べるらしい。
「育ちざかりだから、食べても食べても魔素が足りないみたいでぇ。今、うちに食べ物はありませんしぃ。買って帰っても取られるだけですぅ。」
肩を落としたキャサリンさんに、おじさんが「ああ。あいつらなあ。」と同情の眼差しを送る。
おじさん曰く、「並んでた串、全部食っていきやがった。」ことがあるとかで、キャサリンさんの言いたいことはよくわかるようだ。
並んでる串焼き全部かあ。
以前見たおじさんの串焼き屋台って、人気があってお客さんも多いから、いつもたくさんの串を焼いていた。
軽く数十本はあるあれを全部…。
キャサリンさん家のエンゲル係数ってものすごいことになってそうだなあ。




