7
とりあえず無事に終わった話し合いの後、クルビスさんは仕事に、私は挨拶の草稿を考えるのに忙しくしてると、あっという間に夜になった。
ルシェモモでは涼しい夜の間に寝てしまうから、日が暮れたらお仕事は終わりだ。
夕方の6時くらいには、クルビスさんも大抵仕事が終わっている。
いいなあ。日本でOLやってた頃は夜8時まで仕事とか普通にあったのに。
その分、朝が早いけどね。
夜明けには動き出すんだから。
さて、今は二人っきりで寝室の方にいるんだけど、今はクルビスさんに挨拶の草稿を呼んでもらっている。
シーリード族は実力主義で、目に見えてわかるものに弱い。
だから、婉曲な表現は避けて、ハッキリ言う方がいいだろうと、集まってもらったことへのお礼をしたら、「この料理教室の目的は~」と本題に入ってしまうことにした。
表向きの目的は、お披露目で根回ししたように「故郷の味を無くしたくない。」ということ。
はるか遠い故郷のレシピだから、こちらの材料で完全に再現は出来ないものの、なるべく近いものを作ったこと。
それをルシェモモの街で普通に食べられるようになって欲しい。
例えるなら、ゼリー。
どの店でもメニューにあるゼリーのように、気軽に食べられるようになって欲しいから、レシピに関しての一切の権利は主張するつもりはないこと。
紹介するレシピはルシェモモ初の「公開レシピ」として街に登録するため、誰でも閲覧可能なこと。
ただし、基本のレシピに加えて、甘さやゼリーの厚みなど、各自で工夫してレシピと違う作り方をしてもかまわないし、各自の工夫した部分については、今まで通り情報は保護されるので安心して欲しいこと。
ざっと書きだしてみたんだけど、言わないといけないのはこれくらいだ。
口で言うだけじゃ弱いかと思って、挿絵付きレシピの上に公開レシピと追加で入れて見たんだけど、それについてはクルビスさんは「わかりやすくていい。」と言うだけだった。
参考にならない。
まあ、料理に関してはクルビスさんは素人だし、最終的にルドさんの意見を聞かないとだめだろうなあ。
できれば、ウジャータさんにも見てもらえたらと思うけど、忙しい方だから中々時間が合わないんだよね。
ルドさんを通じて話は聞いてもらってるから、何か問題があれば、ルドさんが教えてくれるだろう。
仕事についてはこれくらいでいいとして。さて、ここからが本題。
クルビスさんが何を隠しているか。
何が「不安」なのか。それをどう聞き出そう。
 




