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昼食を食べた後、クルビスさんに午後の予定を話すと「俺も一緒に行く。…ダメか?」と言われた。
いやいや。2mはある体格のいい大人が首かしげてダメか?って…。ダメじゃありませんとも。
他のひとがしたら若干引いてしまうかもしれないけど、クルビスさんだからオールオッケイ。
私の目も大概伴侶フィルターかかってるなあとは思うけど、そこは、まあ、新婚ですから。
「私はいいですけど、ルドさんとシードさんにも相談してみましょう。」
本当は良いですよって言ってあげたいけど、さすがに守備隊のお仕事があるから勝手に変更は出来ないだろう。
こっちの世界では料理のレシピは機密性の高いものだし、素人のクルビスさんがその話合いに同席していいのかわからない。
そんなことで、さっさとまだ食堂にいたシードさんと話していたルドさんに確認を取ることにする。
すると、シードさんは「いいんじゃね?」と軽~く返事を返してくれ、ルドさんは「ハルカがいいなら問題ない。」とこれまたあっさり許可してくれた。
いいの?そんな簡単に。
思っていたのが顔に出ていたのか、シードさんが説明してくれた所によると、「近くにハルカがいるのに抱え込まないと、クルビスが仕事にならねえから、とっとと用事を済ませて戻ってきてもらう方が効率がいいんだよ。」とのことだった。
雨季の時はそこまでじゃなかったのに、何だか悪化してない?
ルドさんも「まあ、フィルド隊長もそうだったらしいから。」とフォローにならないフォローをしてくれた。
つまり、引っ付き虫なクルビスさんと一緒にいろってことですね。
これもドラゴンの血筋を伴侶に持ったものの務めかあ。
よし。腹をくくって、一緒にいましょう。
私が納得すると、タイミングを見計らっていたのか、アニスさんが声をかけてきた。
「あの、ハルカさん、後で少しよろしいでしょうか?」
たしか、アニスさんは今日は休みだ。
そして彼女には時間のある時に、この間送られてきた勧誘のチケットの換金をお願いしてたはず。
でも、今のアニスさんは困ったような顔をしている。
これは、上手くいかなかったのかな?
面倒そうなチケットだったし、私としては手元にさえなければ買いたたかれても良かったんだけど。
変な勘繰りされたり、値段がロクにつかなかったとか?
そんな想像が浮かんだけど、とにかく話を聞こうとクルビスさんの許可を取って執務室で話を聞くことになった。
クルビスさんの心境の変化とか、その辺はまた夜にでも聞いてみよう。
本能の話ならそこまで心配しないけど、今のクルビスさんは雨季の時みたいに無意識にじゃなく、意識的に私を抱えたがっているようだから。
話もまとまったし、一旦クルビスさんの執務室に戻ることにし、話を聞いていたシードさんも急いで食事を片付けてついて来てくれることになった。すみません。
部屋に戻ると防音の術をクルビスさんがかける。
え。これってもしかしてマズい話なの?
「あの、先日渡されたチケットなんですけど、今日換金に行ったら、1つだけ非売品扱いで売ることは出来ないと言われまして。あ、残りは換金できました。こちらが領収書とお金です。代理ですので、現金払いになります。」
「ありがとうございます。」
そういって困った顔でアニスさんが差し出したのは、私の所に送られてきた特別席のチケットと、作るのがとても面倒だった領収書も兼ねた代理で売ることを証明する書類、そして片手で抱えるくらいの大きさのパンパンに膨らんだお財布だった。
チケットはもともと高価な席ばかりだったし、枚数もあったから結構な金額になるだろうとは言われてたからパンパンの財布はわかる。
うわあ領収書で見るとすごい金額。代理のひとが売る場合は、いつもの魔素で使うプリペイド式の財布は使えないので現金でのやり取りになるんだけど、持ってるのが怖い。さっさと貯金しよう。
でも、まさか売る事自体が出来ないチケットがあるなんて…。
日本では非売品ってあっても売られてたりすることもあるけど、ルシェモモでは無理みたいだ。
これは何が何でも来てくれってことなの?ちょっと怖いなあ。




