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夏用メニューは果物を中心とした炒め物だった。
果物が野菜と同じに扱われるところが南国だなあと思うけど、結構あっさりしていて美味しい。
ルドさん曰く、炒め物なんかに使う果物は熟れていないものを使うんだそうだ。
そういえば、あー兄ちゃんが、青いバナナを焼いてパン替わりにしてたり、青いパパイヤをサラダなんかに使うことがあるって言ってたなあ。
東南アジアの国の料理に一時期はまったらしくて、フォーなんかもしょっちゅう食卓に出てた。
発想は同じなんだろうな。
クルビスさんにも教わったけど、熟れた果実は夏にはクセが出るし、痛んでる場合もあるから暑くなると生食は一般的じゃないそうだ。
ジュースも青みのあるものを取って絞るのが一般的なんだって。
暑い中で食べるものを調達するのも大変だなあ。
冷蔵庫だって、街中ならあっても、外の街や村なんかには普及しきってないみたいだし、冷蔵運搬なんてできないんだろう。
転移局だって、ルシェモモの街中みたいにいたるところにあるわけじゃなく、街や村に1つというのも普通らしいし。
そういえば、ルシェモモの外って、エルフの里やドラゴンの里以外行ったことないなあ。行こうとも思わないけど。
クルビスさんお仕事で街から離れられないし、私もクルビスさんから離れられないし。
今だって膝の上でご飯食べさせてもらってるもんね。
「ほら、あーん。」
しかも、蜜月の最初の時に私が「あーん」って言って食べさせたりしたもんだから、すっかり覚えちゃって。
皆見てるし、膝の上だし、ううっ、恥ずかしい。
私の口の前にはフルーツと野菜をまとめて刺したフォークがある。
腰はがっちりつかまれてるし、逃げられないんだろうなあ。
パクっもぐもぐもぐ。ごくん。
うん。さわやかな香りとシャキシャキした食感が美味しい。
美味しいんだけど…。
やっぱり、最近のクルビスさんは変だ。
蜜月終わってないっていうのは聞いてたけど、雨季の時とは違うっていうか、私から離れるのを極端に嫌がる。
もしかして、伴侶を抱え込んで巣に籠るはずが、蜜月の最初で私がお菓子作ったり結構自由にしてたせいかなって思ったんだけど、シードさんに聞いても、フェラリーデさんに聞いても「それはない。」って言うし。
お仕事で何かあったのかなあ。これ今日1日離れないよね?
もうすぐ、最初のお料理教室が始まるんだけど。
今日の午後からだって、ルドさんと料理教室で教える手順の最終確認とかもするのに。
どうしよう。