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「待たせたなハルカ。食事に行こう。」
「あ、はい。もう終わったんですか?」
私がコーヒーを一杯飲んでる間にクルビスさんの執務は終わっていた。
あれだけの量があったのに、もう処理を終えたようだ。
書類の山なんて生まれて初めて見たけど、クルビスさんは疲れた様子もない。
シーリード族とは能力が元から違うって実感することが多いけど、クルビスさんの場合、さらに何か根本的にかなわないと実感することが多くなった。
クルビスさん本人も他より能力が高い方だという自覚はあるみたい。
もちろん、努力はしてるけど、身につくのは他より早かったって言ってたしなあ。
それ聞いた時は「チートかよ。」って思っちゃったし。
まさか、リアルチートが自分の旦那様になるとは…。
人生ってわかんないなあ。
あ、でも、技術者に必須の創作とかデザイン方面には才能がまったくないって言ってたっけ。
才能が無い上に身体を動かすのが好きだから、ジッとしてる時間が長い技術者は諦めたらしいし。
技術者の街だけあって、ルシェモモの子供たちは1度は技術者を夢見るものだから、才能が全くないとわかったときは落ち込んだみたい。
街の英雄で皆の憧れの隊長さんなのに、なりたいものになれなかったなんて、話を聞いた時はクルビスさんには悪いけど親近感を感じてしまった。
それでも、クルビスさん偉いなあと思うのは、壁にぶち当たってもひねくれたりはしなかったところだ。
自分には出来ないと思っているからか、クルビスさんは技術者にとても敬意を払う。
技術者の街で技術に関する才能が無いっていうのは致命的だと思うのに、それを当たり散らすようなことはなかったそうだし。
まあ、ご両親が守備隊にいたから、技術者になってみたいと思ってるなんて、周りにはわからなかったみたいだけど。
この話を教えてくれたシードさんは「根がくそまじめだからなあ。誰かにあたるってのがねえんだよな。」とクルビスさんのことを笑ってたけど、それがクルビスさんの美徳の1つだとも思う。
「ハルカは何にする?」
「そうですねえ…。さっぱりしたものが食べたいんですけど。」
あ。そういえば、夏メニューがそろそろ出るってルドさんが言ってたっけ。
冷たいパスタってあるかなあ。屋台ではあったけど。
出来れば、豚しゃぶ乗せてドレッシングかけて食べたいなあ。
コンビニではよく買って食べてたけど、こっちではそういうのって無いのかなあ。