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3時半を過ぎると、荷物の整理と簡単な掃除を同時進行でして業務はすべて終わる。
私の今週の担当は掃除だ。
片付けるのが早いのは、少ない数で日が出てるうちに終わらせるための工夫の一環だ。
掃除といっても、全体のきちんとした掃除は朝にやるから、転移陣の部屋だけを掃除する。
砂粒1つが、場合によっては転移陣の不具合にもなるからと、転移陣の掃除だけは朝と夕の2回やることになっている。
一日中物のやり取りがあると、さすがに砂や土が落ちている。
砂って、取っても取っても入り込むんだよね。
対処するには、こまめな掃除しかないっていうのがよくわかる。
仕事が終わる頃にはクルビスさんが顔をのぞかせる。
早く終わっても、遅く終わっても仕事が終わると声をかけてくれる。
…遅く終わった時はともかく、早く終わった時はどうやって仕事切り上げて来てるんだろう。
シードさんが「ハルカ迎えに行く頃はそわそわして仕事になんねえ。」と前に言っていたから、早めに来て待っていてくれてるんだろうか。
それは申し訳ないからと、クルビスさんに事情を聞こうとするけど、二人っきりになると大体抱きつぶされて有耶無耶になっている。
周りにはクルビスさんが迎えに行かないという選択肢は無いからあきらめろと言われたけど、納得いかないなあ。
何か隠してるような気もするし。
そんな疑問を抱えつつも、クルビスさんに声をかけられるといそいそと寄っていくのは嬉しいからだ。
「お疲れ様です。」
「「「お疲れ様です。」」」
さ、お仕事終わり~。帰ろ。帰ろ。
カイザーさん達に声をかけて転移局を出ると、ふたりで守備隊に向かって手を繋いで歩きはじめる。
ふたりで帰っているのは近所ではすっかり有名になってしまっている。
その影響か、今では転移局と守備隊までの道は若者のデートスポットみたいになっていた。
なんか、手を繋ぐのも流行ってるみたいだし、ふたりで歩くカップルが結構目につくなあ。
いいなあ。デート。こっちは仕事終わって帰ってるだけなのに。
買い物もろくに行けてないカップルなのに、何がそんなに流行る理由になるんだろう。
私たちってホントに何もやってないからなあ。
お家は守備隊だし、夕食もこの頃は守備隊の食堂が多いし、私も仕事以外は閉じこもりがちだしで、新婚さんらしいデートは式の後の一回しかないんだよね。
主婦業だって、守備隊で生活してるからほとんど必要ないし、部屋の片づけくらいはするものの、嫁としてほぼ何にもやってない状態には焦りを覚える。
そういえば、そろそろお休みがあるんだっけ。
クルビスさんは仕事みたいだから、お部屋を大掃除しようかな?