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お昼が終わって帰ると、丁度12時ぎりぎりくらいだ。
私たち転移局のメンバーは魔素の消費が激しいから、量を食べる分、食事に時間がかかる。
それは他の転移局でも同じらしく、デリアさん曰く、食事が終わってすぐにお店を出ても、午後の勤務開始ぎりぎりに帰ってくるなんてこともよくあるのだそうだ。
もうちょっと余裕が欲しいけど、魔素の補給は最優先だから、仕方ないと割り切っている。
本当に忙しい時は持ち帰りで買って、交代で食べるらしいから、外に食べに行けるだけマシだろう。
そんな慌ただしいお昼が終って午後になると、個人の荷物の受け取りが増える。
受け取りの荷物のほとんどは午前中に届いていたものが多いから、転移陣につくのは1人にして、カウンターに1人、残りふたりで仕分けをしておく。
この仕分けも結構大変で、まず中身の品目で分け、割れ物とそれ以外に分ける。
上乗せ出来ない商品は棚に乗せていき、それ以外は手前のカートに積み上げる。
人手が足りるようになったので、荷物の送付もその日のうちに出来るようになったから、カートが空くようになって、有効活用できるようになったんだよね。
ホント、デリアさんが来てくれて助かった~。
交代で転移陣を使えるのがこんなにやりやすいとは思わなかったもんね。
デリアさん、こっちに移動を希望してる話だったけど、もうこのままこっちにいてくれないかな。
彼が戻った後はしばらくしんどそうだなあ。
北西の転移局の現状を考えると、うかつなこと言えないけどね。
下手なこと言うと、逆に、「じゃあ、人数多いから、私は別の所へ。」って言われちゃいそうだし。
北西の転移局の公式の規模だとそうなりそう。
まだ、体調不良で勤務に戻れないひとや勤務時間の短縮があって、術士は足りてない状態だし、わがままに聞こえちゃうかもしれない。
上手くいかないもんだなあ。
ん?これ、何だか変な荷物だ。カシャっていったけど…え。壊れ物ってこと?
いやいや。金属音っぽかったし、割れ物じゃないと思う。
送り状には、え~と、「調理器具」って書いてある。あ。シェリスさんの荷物だ。
「ハルカさん。どうかされましたか?」
一緒に作業してたデリアさんが心配そうに聞いてくる。
ちょっとデリアさんにも聞いてみようか。
「いえ、あの、この箱、「調理器具」が入ってるみたいなんです。でも、何か音がして…。」
私がデリアさんの方を向くだけで、箱からまたカシャカシャっていう音がする。
顔を強張らせたデリアさんが「これは局長に報告した方がいいと思います。」と意見をくれた。
デリアさんも私と同じことを思ったみたいだ。
転移させる場合には、商品の保護も店の義務だから、箱の中で布なんかで仕切らなきゃいけないはずなんだけど、この金属があたる音がするってことは中の商品も曲がったりしているかもしれない。
これも、北西の転移局で良くある問題のひとつだ。
売りつけられる商品自体が粗悪だったり、送り方が雑だったりで、運ぶ途中で壊れてしまったりする。
今回はどっちだろう。
どちらにしても、まずは上司に報告しなきゃ。