6
慌ただしい午前中が終ると、ようやくお昼だ。
ああ。疲れた。ずーっとお客さんがいる状態って結構きついんだなあ。
OLの時だって、直営店の店員やったりしたこともあったけど、雑貨屋さんではそこまで忙しくなかったから知らなかった。
お昼のコンビニとかで「わ~。すごい人だなあ。大変そう。」なんて他人事みたいに思ってたけど、まさか自分がその状態になるとは。
「さあ。お昼に行きましょうか。今日はどこにします?」
入口を閉じたカイザーさんが皆を振り返って質問する。
皆一緒に食事をするというのは珍しいらしく、デリアさんは初日にずいぶん驚いていた。
まあ、人数少ないとはいえ、同僚や上司と毎日一緒にご飯を食べに行くのは珍しいだろうな。
でも、従業員の数の少ない北西の転移局では、結束を強めるため、2人に増えた時からお昼は一緒に食事を取ることが伝統になっているのだそうだ。
組織内でハブられてる分、結束が強くなるのかもしれない。
もちろん、断ってひとりで食べにいってもいいらしいけど、この世界の食べ物に不案内な私はもちろん、デリアさんも一緒に食べることに異存はないようで、4人一緒に食事に行っている。
「じゃあ、今日はシェリスさんのお店に行きませんかぁ?最近できたお店で、お昼も限定らしいんですけどぉ、美味しいらしいですしぃ、今日はちょっと早いからいけるかしれませんよぉ。」
限定かあ、ちょっと心惹かれるなあ。
確かに、今日はちょっとだけ早くお客さんもはけたし、いけるかもしれない。
「いいですね。兄と行きましたが、軽食も美味しかったですよ。」
「じゃあ、そこにしませんか?」
「ええ。楽しみですね。お昼が残ってるといいですねえ。」
デリアさんの後押しもあって、私もカイザーさんも快諾し、今日のお昼はその新しいお店に決まった。
美味しいと評判なら、売り切れるものあっと言う間だろうということで、急いでお店に行く。
「わぁ。もう並んでますねぇ。」
そのお店は湯呑型の建物の一階で、店の前に大きな日よけのきのこが置いてあった。
薄紫の綺麗なきのこで、その下に入ると日差しが遮られてひんやかする。
「へえ、冷却の術がかけられてますぅ。珍しいですねぇ。」
「だから、涼しいんですね。」
「この下なら、これからの季節も外でお茶が飲めますね。」
「兄と来た時も外の席でしたけど、涼しかったですよ。北は涼しい設備が整ってますね。」
キャサリンさんが術式に気づいたのに同意すると、カイザーさんもデリアさんも感心していた。
冷房設備付きかあ。まあ、日よけだけじゃあ暑いもんね。