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朝のラッシュが終ると、今度は荷物を送りに来るひと達でごった返す。
特にこの時期はコンクール用の作品の提出もあって、次から次へと荷物が来る。
ふたつの転移陣をフル稼働し、受付も2人態勢でようやく捌ける程度だ。
デリアさんがいてくれて良かった。ほんと良かった。交代出来るもん。
これで3人だったら、洒落にならないことになったんじゃない?
これまでどうやって乗り切っていたんだろう。
「こっちは終わりました。」
「ふう。こっちも終わりましたぁ。他にはありますかぁ?」
「いえ。さっきの分で終わりです。急ぎはもうありません。」
私が最後の荷物を送ると、キャサリンさんも終わったようだった。
デリアさんから荷物がもうないことを聞くと肩の力が抜ける。
「ちょっと休ませて下さぁい。ハルカさんも、連続でやってましたよねぇ?大丈夫でしたかぁ?」
「ええ。途中で交代してもらいましたから。でも、流石に少し疲れました。早くお昼休みになって欲しいですね。デリアさんも大丈夫ですか?」
「ええ。まあ。…正直、ここまでの量だとは私も思いませんでした。いつもこれ程の量を?」
さすがにデリアさんもお疲れ気味だ。
彼のいた南の転移局は大きな所だったようだし、人手も十分あったんだろうなあ。
「いいえ。流石にいつもはこの半分ですね。丁度、今の時期が一番多くて。この辺は技術者さんの工房と食事処が同じくらい多いですからね。こうなるんです。」
カイザーさんの説明にデリアさんは目を見開いて驚いていた。
これは普段の量がが少ないと驚いてるのか、多いと驚いているのか。
「いつもでもこの半分ですか…。うちの局長が「あそこはすごい」って言ってた意味がわかりました。」
「すごいですかぁ?」
しみじみとつぶやくデリアさんに、キャサリンさんがさらに突っ込んで聞いている。
私も気になる。他の転移局からの評価がわかるいいチャンスだ。
どうやら多い方で驚いてたみたいだし、いい評価じゃないかもだけど。
この転移局って規模の割に仕事が多いんだけど、それをどれくらいのひとが知ってるんだろう。
「ええ。以前、こちらにお手伝いにきた経験のある方なので、「流通の量を術士の腕だけじゃなく知恵でカバーしている。あそこで転移局というもののあり方を学んだ。」と言っていたんです。」
思いがけず、最上級の褒め言葉が出た。
魔素の様子を見る限り、デリアさんは聞いたままを言ってるみたいだ。
工夫と知恵で足りない部分をカバーする。
北西の転移局のあり方はまさにそれだけど、わかってくれる人がいたんだ。
実際にお手伝いに来たひとだから、理解出来たのかもしれない。
カイザーさんにはその局長さんに心当たりがあったようで、この言葉の由来を教えてくれた。
「ああ。ピーコ殿は先代の局長の時にいらした方ですから、余計そう思われてるでしょうね。あの時はどんどん増える荷物に頭を抱えていた時で、一緒に改善策を考えて下さったと聞いています。私がこちらに来るときも色々と助言して下さって、先代がいる間に勤務出来るよう、後押しして下さったんですよ。」
きっと、改変期だったんだろうなあ。
今みたいな手順がしっかり決められた状態じゃなかったのかも。
それを1から作るのは大変だっただろう。
その南の局長さんは、お手伝いとはいえ、当時の現状を見て思う所があっただろうなあ。
カイザーさんも助けてくれたみたいだし、どうやら、南の転移局長さんは数少ない味方らしい。
でも、デリアさんはくれないんですね。残念。