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転移局を出て、クルビスさんとのんびり歩く。
守備隊のお仕事はまだ残ってると聞いたから、夕食は守備隊の食堂で取ることになった。
寄り道は出来ないけど、手を繋いでふたりで過ごすのは久しぶり。
ちょっとウキウキしながら、今日の出来事を話す。
午前中の荷物が多かったこととか、近くの転移局のひとが挨拶に来たこととか、順番もばらばらで思い付いたことを話すだけだったけど、クルビスさんは楽しそうだった。
お昼に何を食べたかという話になって、臨時のひとが来ることを思い出す。
クルビスさんには言っておいた方がいいだろう。
男性だったし、明日迎えに来た時に機嫌が悪くなっても困る。
「そういえば、明日からお手伝いに来て下さる方がいるんです。」
その話をすると、クルビスさんはすでに知っていたらしく「ああ。」と頷いた。
誰かが教えといてくれたのかな。
でないと、危ないもんね。
ただ、お手伝いの話は知ってても、さすがに来て下さる方がデートの夜に差し入れしてくれたお兄さんの兄弟だって話には驚いていた。
「そうなのか。世間は狭いな。」
「ええ。驚きました。」
そのまま、あの時差し入れしてくれたお兄さんの話になったんだけど、差し入れしてくれたお兄さんは南の出身だけど、西で修行して、こっちでお店を出したひとらしい。
クルビスさんも良く知ってる惣菜屋さんのおじさんがお父さんで、クルビスさんが小さい頃にはもう北西の地域でお店を出していたそうだ。
どうして離れて暮らしていたのかは知らないけど、惣菜屋のおじさんは地域に貢献したひとなので、息子さんのお店も受け入れられるだろうと言っていた。
そんな話をしつつも「この辺の料理にもまた変化があるだろうな。」って、どことなく嬉しそうな感じだ。
あの時差し入れしたもらったのって、海の幸を使ったものばかりだった。
クルビスさんって海の幸が好きなのかな。
私も海の幸は好きだから、そういうメニューが増えるなら嬉しい。楽しみだなあ。
また、クルビスさんと一緒にいろいろ食べ歩きたいな。
そんな風にいろいろ話をしている間に守備隊についた。
ほとんど食べ物の話だったなあ。新婚なのに。
もうちょっと色気のある話題をしたいけど、それはそれで恥ずかしいとも思う。
まあいいか。クルビスさんと一緒のご飯は楽しいし。それに何だかお腹空いてきちゃったし。
「何だか腹が減ったな。先に食事にするか?」
「そうですね。今なら席も空いてますし。」
夫婦って似たこと考えるのかな。それとも私の顔に出てたのかな。
どちらにしろ大賛成だったので、クルビスさんと先に食事を取ることにする。
カウンターに行くとルドさんが出てきてくれた。
折りたたまれた紙を差し出されたのだけど、どうやらルドさんのお母さんのウジャータさんからに手紙らしい。
「守備隊宛てってどう出せばいいかわからなくて、俺に言づけることにしたようだ。」
ルドさんはそう言って笑っていたけど、言づけのためだけに呼び出されたんだとしたら申し訳ない。
今後は私宛の手紙や書類は増えるだろうし、連絡手段はきちんと決めておかないとなあ。