表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
396/397

 いつも身につけている身分証にもなるカードを、薄紫の手のひらサイズの箱型の装置に近づける。

 これでお買い物は完了だ。



 屋台は値段が決まってて、かざすだけだから、会計も早いよね。

 カードの読み取り装置も簡易タイプの小さなものですむし。



 食堂みたいな大きめのお店には、20cmくらいの立方体の置き型の装置が置いてある。

 値段の打ち込み機能や割り勘機能もあって、職場の昼時にはよくお世話になっている。



「はいよ。祭り用3つね。今日は奥に屋台がたくさんあるよ!楽しんどくれ!」



「ありがとうございます。」



 アニスさんが焼きそばを受け取ると、おばさんが目を細めて見送ってくれる。

 情報通り、奥にはまだまだ屋台がズラりと並んでいる。



「次は何を買いましょうか?」



「甘いものが良いですね。」



 りんご飴ならぬ、フルーツ飴とかないかな。

 もちろん、異世界な屋台ものも大歓迎だけど。



「あ、なら、あちらに行きませんか?知り合いの店があるんです。」



 アニスさんの案内で、奥に進むと人だかりが見えた。

 え?前に進めない。うわ。ジャンプして、屋根を移動してる人がいるんだけど。



「ああ。ちょっと遅かったですね。この先に連れて行きたかった飴細工の屋台があるんですよ。今は、細工を披露する時間帯みたいですね。しばらく待ちましょうか。」



 飴細工?あの屋台で売ってる、アニメキャラの形に細工したやつ?

 元ネタあー兄ちゃんだな。



 しかも、細工を見せるってことは、鳥とか、伝統的なデザインの飴細工なんじゃないかな?

 うわあ。小さい頃、一度だけ見たことあるけど、あれ楽しいんだよね。



 こねて、伸ばして、ハサミでチョキチョキチョキって切っていけば、いつの間にか鳥になってるの。

 柔らかい飴だから、すぐ食べなきゃいけないんだけど、もったいなくて、家に持って帰ったら、変形しちゃって。



 妹は要領が良かったから、さっさと食べてしまっていたけど、私は泣いちゃったんだよね。

 でも、あー兄ちゃんに「飴なんだから、どうせ食べたら溶けるだろ?」って言われて、それもそうかって思って、食べた飴は甘くて、素朴な味だったな。



「ふふ。懐かしいですね。」



「うちの一族が広めたんですが、今じゃ、祭りの名物ですよ。」



 私の独り言に、アニスさんがウインクして答えてくれる。

 アニスさんは私の事情を知ってるから、あー兄ちゃんが伝えた飴細工を見せようとしてくれたんだろう。



 元の世界にあったものと似た物が見つかると私が喜ぶから。

 彼女は世話係なだけあって、私をよく見ている。



 その気遣いには感謝しかない。

 こっちの世界で、周りに恵まれてるなあ、って感じるのはこんな時だ。ありがたいなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=721049258&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ