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「お祭りがあるんですか?」
「ええ。ハルカさんは初めてですよね。朝まで夜通し騒ぐお祭りなんですよ。」
夜通し!?カイザーさんの説明にギョッとする。
あ、でも、私の結婚式の時も、たしか一晩中お祝いで盛り上がってたんだよね。こっちでお祭りやお祝いは一晩中の宴会を指すのかな?
「暑くて寝られませんからねぇ〜。どうせ起きてるならって、宴会になったそうですよぉ〜。」
「楽しいですよ。屋台もたくさん出ますし、この時期に限定のメニューや新作のメニューが出るんです。」
キャサリンさんとデリアさんが夏祭りのことを補足してくれる。やっぱり宴会だった。
でも、屋台の限定に新作かあ。食べてみたいな。
「限定に新作ですか。美味しそうですね。」
「美味しいですよぉ〜。あ、カイザーさん。守備隊で、かき氷が出るって、本当ですかぁ〜?」
「ええ。ここ数年、暑さで倒れる方もいますからね。今年はどこの地区の守備隊も体を冷やすメニューを出すことにしたそうです。」
「ええぇ〜!?」
「体を冷やす、ですか。」
カイザーさんの説明にキャサリンさんとデリアさんが口をかぱっと開けて驚いている。それも仕方ないかな。
こちらの世界はトカゲさんやヘビさんがメインの種族だから、食べ物は温かいものが基本だ。体は冷やさない。
まあ、それでも近年は暑すぎて、冷房が開発されたり、かき氷機が開発されたりしてるんだけど。
ただ、それは個々に体調を調整するために使われるくらいで、お祭りのメインメニューになるものではない。
守備隊の食堂のメニューに加わることになった時ですら、結構な騒ぎになったくらいだし。
だから、カイザーさんの話は衝撃がすごかった。
「驚いたでしょう?私もビドーさんに聞いた時は驚いてしまって。でも、去年は、この辺りでは30も暑さで倒れたそうですから、冷たいメニューになるのもわかりますね。」
30って、そんなにたくさん倒れたなんて。
そりゃ、かき氷出すよね。倒れる前に冷やさないと。
カイザーさんのニュースソースはビドーさんみたいだけど、それなら確かな情報だろう。
ビドーさんは地域の見回りもしてるから、去年は大変だったんだろうな。
「あぁ〜。確かに。去年は酷かったですよねぇ〜。私の知り合いだけでも、5つは倒れたって聞きましたからぁ〜。」
「こちらは多かったんですね。南の僕が住んでた地域では、7つくらいでした。海からの風が強いので、そのおかげだったみたいですけど。」
地域によって結構差があるみたい。
風が吹いてたら、だいぶ違うよねえ。
「あ〜。南の海風は有名ですもんねぇ〜。いいですねぇ〜。この辺りは建物が密集してて、風が通りにくいんですよねぇ〜。」
「古い建物も多いですしね。冷房のない所も結構ありますし。それで倒れてしまった方が多かったようです。」
「ああ。それで。」
キャサリンさんとカイザーさんの説明にデリアさんは納得していた。
北の地域なのに、こっちの方が暑いんだ。うわあ。これは結婚式の時のベール引っ張り出した方が良いかも。