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「キルビル様。アース様。オルファ様。ご馳走様でした。繊細な味わいだけでなく、見た目も楽しませて頂きました。貴重な席にご招待頂き感謝致します。」
お茶を飲んだクルビスさんが、キルビルさん達にお礼を言って、座ったまま礼をする。
私もそれに習って礼をする。感謝の魔素は隠さない。
今のは前半に出された料理を気にいったことを示している。
周りももちろん聞いていて、お披露目は大成功だと、トカゲの一族の次代が認めた料理だと、あっという間に広まるだろう。
「ホントに美味しかったよね〜。ご馳走様〜。お店の方も行きたいなあ〜。」
「まったく。どの料理も素晴らしいものでしたが、スープや肉料理などは、今までにない発想でしたな。ご馳走様でした。」
「ほんに。大胆な見た目を裏切る繊細な技術は目を見張るものがあった。ご馳走様でした。今日は来てよかった。」
「ご馳走様でした。あそこまで食材の特性を活かした料理は初めて見ましたわい。」
クルビスさんに続いて、メルバさんも感謝の魔素と共にお礼を言う。
長老さん達も後に続いて、口々に褒め称えた。魔素から上機嫌なのが伝わってくる。
キルビルさん達はとても嬉しそうだ。
特別ゲストからの魔素を隠さない、お世辞なしの賛辞は、招いた側の大成功を意味するらしいから、そうだろうなあ。
これで、アースさんのお店は、さらに格が上がったことになる。
長老さん達が干物をゴリ押しした時に、キルビルさん達が話に乗ったのも、お世辞でもこういうのを期待した部分もあったと思う。
でも、実際はどの料理も素晴らしい出来だったし、絶賛が返ってきたわけで。
これは嬉しいだろうなあ。
「ありがとうございます。皆さまからのお褒めのお言葉、私から調理師に直接伝えておきます。きっと喜びます。」
店をもつアースさんが代表して答える。
そういえば、調理師さんは表には出て来なかったなあ。スイートポテトの後くらいなら、挨拶は出来るかもって思ってたけど。
「出てくれば良かったのに。彼らしいが。」
「そんなことをしたら、きっと緊張で倒れてしまいますよ。私との挨拶でさえ、ガチガチでしたから。」
キルビルさんがため息をつき、オルファさんが苦笑する。
調理師さんは、緊張しやすい方なのか。
今回、ルドさんが厨房を手伝ってくれたおかげで、私はお店の調理師さんとは顔を合わせるタイミングがなかったんだけど、この様子だと故意に避けられていたのかも。
お披露目に便乗させてもらったお礼とか言いたかったんだけど、お店に行っても会えないかもしれないなあ。