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出てきたお茶は、飲むと穀物のような香りがするのに、口の中の味が綺麗さっぱり消える不思議なお茶だった。
ん?お腹が軽くなったような?
「以上が、キヌーレの新作です。奇想天外な素晴らしい料理の数々でした!店のオープンは来月頭となります。場所は中央の南大通り西側、赤い食器の看板が目印です。さて、次は今この場まで秘密とされていましたハルカ様の新作レシピの登場になります!こちらは公開レシピとしてすでに登録されておりまして、その一番最初の公開にスタグノ族が立ち会うこととなりました!」
不思議なお茶が下げられると、唐突に香ばしい香りが広がる。食べやすいよう、いくつかのスプーンに盛られ、そのままお皿に乗せられたしょうが焼きが運ばれて来た。
肉の匂いに驚く人もいたけど、大半は何が来たのかとしげしげと眺めている。
きっと、何でデザートの後に肉が?って驚いたんじゃないかな。
司会の人が紹介してくれたけれども、みんな出てきた料理をじっと見て動かないし。
「血の匂いがしない。でも、肉の香り、ですね。」
「しかし、今日は魚料理と伺っておりましたが。」
「リギの香りもしますね?」
キルビルさん、アースさん、オルファさんが首を傾げながら、料理を食べる。
どうやら、料理の順番が問題ではないみたいだ。
他の人は私のレシピだと聞いて、「なんと光栄な。」とか、「まあ、わたくし達が初めて味わいますの?」とか言っていて、かなり騒がしくなってきた。
うう。視線が突き刺さるんですけど。
誤魔化すようにしょうが焼きを食べる。
うん。薄味だけど美味しい。
魔素はちゃんと少な目だ。
ルドさんと砂糖以外のみりんなんかの甘味の調味料を片っ端から試した甲斐があった。
「もう少し食べたい。」
クルビスさんが、小さな声で呟いた。
うん。わかる。クルビスさんと私じゃ、魔素が足りませんしね。
しかも、さっきのお茶、少しだけど食べた魔素を減らしてるみたい。
ヘビの一族のお披露目の時、アニスさんに作ってもらった消化剤を思い出す。
だからか、お腹が空いて、しょうが焼きを何口か食べるだけじゃ、返ってキツい。
後で、別の所で何か食べられないか、キルビルさんにお願いしようかな。