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デザートはかき氷だった。
ただし、花の香りを移した黄色い蜜をかけて食べるものだ。
添えられた蜜のカップから花の香りが漂ってくるくらいだから、一般に出回っている蜜よりも花の香りが強い気がする。
添えられてるのは赤黒い塊だ。
色はなかなか目に痛いけど、このトッピングの仕方には見覚えがある。
他のひと達も気がついたようで、長老さん達も興味深そうに赤黒い塊を見て言う。
「餡子、ですかな?」
「しかし、色が違いますなあ。」
「何やら粒が混じってますな?」
確かに。赤黒い色が目についてわかりにくいけど、中に何か黒っぽい粒が混じってるみたい。
何かと混ぜたのかな?どんな餡子なんだろう。
「とりあえず食べてみようよ~。いい香りだし~。」
メルバさんが一番に口に入れる。
甘いものが好きだから、待てなかったんだろうなあ。
私が餡子作った時も真っ先に食べてたし。
うわ。メルバさんが固まってる。
どんな味なんだろう。
逆に興味湧いてきた。
よし。食べてみよう。
赤黒い塊をスプーンですくってひと口。
あ、ゆずだ。
ゆず餡だ。これ。ちょっと苦いけど。
え。ゆずみたいな果物あったんだ。
うわあ。柑橘系のさわやかな香りと独特の苦みもあってさっぱり食べれる。
今は一番暑い時期だから、デザートにはぴったり。
なんの果物なんだろう。
ああ。知りたい。
でも、アレンジしたものは開発したひとに権利があるから、教えてもらえないんだろうなあ。
じゃあ、ゆず餡を味わおうと思ったら、お店に通わなきゃ。
それはそれで楽しいかも。
そんなことを思いながら、今度はかき氷をひと口。
ふわふわのかき氷に甘~い蜜が口ですぐに溶ける。
不思議な蜜だなあ。
甘いと最初に思うのに、すぐに口の中で消えちゃう。
魔素も多くないし、一体どんな花の蜜なんだろう。
いい香りだけど、私の知ってる香りじゃないから、なんて表現すればいいかわからない。
でも、鼻につくような感じもないし。
これならスイスイ食べれちゃうなあ。
でも、かき氷は気をつけないと、頭キーンってなるから。
餡子と交互に食べよう。
「…くう。」
あ、クルビスさんったら、またキーンってなってる。
もう、あれ程一気に食べたらダメだって言ったのに。
「うう。」
「頭が…。」
「しかし止まらんわい。」
長老さん達も、やめましょうね。
あ、温かいお茶が来た。
さあ、これ飲みましょう。
クルビスさんも。
「…ありがとう。」
いえいえ。
わ。いい香りのお茶。