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パイ包みを食べ終わると、次は肉料理が出てくるらしく、周りのざわめきも大きくなる。
何の肉を使うのか、どう調理するかで、調理師の腕が問われる。
さっきのシチューがメインじゃないなんて。
一体どんな料理が出てくるんだろう。
周りも期待してるのか、ソワソワと落ち着かない感じだ。
運ばれてきたお皿には、2段のホールケーキのような台座にひと口サイズの揚げ物が乗っているお皿だった。
でも、お肉だけじゃないみたい。
手前の青いのとか、果物だよね?
「肉料理、ですよね?」
「アース君〜。これ、肉料理、だよね〜?」
「ええ。まあ、皆さま、ひと口召し上がってみて下さい。そうすればわかりますので。」
思わず口に出していた私に続き、メルバさんも不思議そうにアースさんに聞く。
メニューを知ってるアースさんは、楽しそうに周りに肉料理のお皿を勧めていた。
うん。そうだよね。
今までのメニューも美味しかったし、まずは食べてみよう。
まずは、手前の青い揚げ物を食べる。
ベリーの天ぷら?あ、でもお肉みたいな食感もある。
中に詰めてたのかな。
ベリーの甘酸っぱさが、お肉の臭みをわからなくさせている。
噛むと肉の味が出てくるけど、ベリーの酸味のおかげでしつこくない。
さっぱり食べられて、私は好きだなあ。
でも、お肉の濃い味が好きなひとには物足りないだろうなあ。
次のは、あ、これはスパイス効かせたお肉と少し甘みのある柿のような果物だ。
栗みたいなホッコリした食感の果物と辛味を効かせたお肉を合わせてるのもあって、これはこれで美味しい。
でも、これって、意図的に肉の感じを隠してるよね?
周りの様子をそっと伺うと、キースさんやメルバさん達はみんな目を見開いて固まっていた。
クルビスさんは不思議そうに料理を見ながら食べているけど、あっさりした味が好きだから、気に入ったみたいですごいスピードで食べている。
「お肉なのに臭くない!」
「これなら、たくさん食べられます!」
固まってたメルバさんやオルファさんが、動き始めたと思ったら、今度は目を輝かせてお皿を空にし始めた。
臭くない?あ、そうか。
深緑の森の一族もスタグノ族もお肉の血の匂いがわかりすぎて、好きじゃないんだっけ。
だから、普段はお魚や血の匂いの少ない肉しか食べない。
みんなが驚きながら食べ終わった頃、お茶を持って来た給仕の方が、セパの肉を使用していたことを教えてくれた。
周りのざわめきが悲鳴みたいな驚きに変わる。
「これがセパ?」
「全くわかりませんでしたわ。」
セパって、スタグノ族は食べないお肉だよね?
だから、以前、黄の一族のひとりがネロを狙った時、何故?ってみんな不思議がったんだし。
「すごーい!これなら、うちの一族の子達もみんな食べられるよ〜!」
「全く素晴らしい!」
「これなら毎日食べられるわい。」
「年寄りにも優しいメニューじゃ。」
メルバさんも長老さん達も大絶賛だ。
もしかして、これってすごい場に居合わせてるのかな。