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次に来たのは、赤い棒のようなもの。
何これ。揚げてあるみたいだけど、スティックみたいに摘めば良いのかな。
あ、小さな黄色いソースの入った器も来た。
マスタードかな。いやいや、こっちでは見た目と味が違うものだし。
「つまんで、ソースをつけてお召し上がり下さい。」
給仕の方の言う通りに黄色いソースをディップして口に入れる。
パリンと軽い食感に驚くと、ハーブの香りが口に広がった。
バジルの香りみたい。
クリームチーズのような固さのあっさりしたクリームと合わせてあるみたいだけど、美味しい。
真っ赤な棒はどうやら薄くして筒状に丸めたジャガイモらしい。
見た目は、長細いラングドシャみたいで、味はポテチにあっさり目のチーズをつける感じだ。
食感と味で二度美味しい料理だなあ。
周りを見ると、メルバさんや長老さん達は、ポリポリカリカリ、夢中でジャガイモスティックを齧っている。
気に入ったんだな。
こういう感じの料理ってなかったのかな。
フライドポテトはあるのに。
あ、でも、地球でもポテチチップスが出来たのは、ずっと後の時代なんだっけ。
スライスするのって、手間がかかるもんねえ。
しかも、これ、長さが20cm以上はあるけど、そんな大きなジャガイモはないだろうから、単にスライスしたわけじゃないんだろうなあ。
ジャガイモを潰して、小麦粉とか入れてパン生地みたいにして、薄く伸ばして、とかならいけそう。
でも、ジャガイモの味しかしないんだけど。
不思議だなあ。
まあ、それが技術なんだろうな。
アースさんもメニューを詳しくは知らないのか、しげしげとポテトスティックを眺めている。
周りも「ほう。この食感は。」とか「楽しいわ。」とか言って、食事に夢中だ。
お披露目としては、すごく成功してるよね。
まだあるみたいだけど、これの後に私のメニューお披露目するの、厳しそうだなあ。
魚料理としては珍しいかもしれないけど、プロの作る繊細な料理の後に食べるものじゃないんだけど。
コース料理の後に生姜焼き食べるの?って感じだよね。
デザートは、まあ、いけると思うんだけど。
キィ隊長とキーファ副隊長に試食してもらって、褒められたし。
不安になってきたなあ。
は。いけない。
料理をご馳走になってる時に不安な魔素を出すなんて。
良かった。魔素はちゃんと抑えられてるし、揺れてない。
気をつけないと。
言葉にしなくても、ネガティブな感情は魔素で伝わってしまうんだから。
それに、もう出てくる順番は決まってるんだし、気にしてもどうしようもない。
それなら、せっかくのお料理を楽しまなきゃ、もったいないよね。
私は気を取り直して、残りのポテトを食べた。
今度、普通のポテチ作ろうかな。