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ガラランッ
硬質な音が響く。
良く見えないけど、貝殻のノッカーの代わりかな。
「長、トカゲの一族の次代様と伴侶様をお連れしました。」
木製のドアが開くと、中には木製の楕円のテーブルがあって、青の一族の長のキルビルさんに、赤の一族の長のアースさん、それに黄の一族の長のオルファさんが木製のイスに座っていた。
それぞれの伴侶様やご家族の方たちはいないみたい。
珍しいな。
私やクルビスさんを迎えるためなら、伴侶や家族同伴のはずなんだけど。
「よくお越し下さいました。こちらへどうぞ。」
キルビルさんが立ち上がって、テーブルの空いてる席を勧めてくれる。
席に着くと、お茶が出された。
「クッキー茶です。」
お茶を淹れてくれてるの、アースさんだ。
ええと、良いのかな。
オルファさんがお皿にお菓子を取り分けてくれて、私の頭の中は混乱していた。
スタグノ族の長様たちにこんなことさせて良いんだろうか。
案内してくれたキルラさんはいつの間にかいなくなってる。
青の一族なら、お茶を用意するのは使用人がやるはずなんだけど、そういうひと達は誰もいない。
「驚かれましたでしょう?あれが我が一族の出迎えなのです。今は、長だけで話があるからと、他の者たちは入れないようにしています。でなければ、事前の挨拶に延々と付き合わなければいけませんから。」
キルビルさんが楽しそうに話す。
青の一族の場合、正式な招待だと一族の年長順に挨拶があるそうで、それだけで数時間かかるそうだ。
「深緑の森の一族の皆様には、お披露目ギリギリに来ていただくことにしています。」
メルバさんは有名だから、挨拶したいひと達で長蛇の列が出来るかららしい。
キルビルさんが長になったお披露目の時は、挨拶が夜までかかったとか。
一族なら慣れている習慣も、他の一族には嫌煙されることを知っているキルビルさんは、少しずつ、この挨拶の習慣を無くそうと努力しているけれど、未だに反対意見の方が多いそうだ。
私達のお披露目の時はそんな延々と続く挨拶はなかったけど、それには別の理由があって可能だったらしい。
「うちの一族から、クルビス様とハルカ様に挨拶したいと希望する者たちが多くて。青の一族が個別に出来るのに、我らは何故出来ないのかと。それで、キルビル様に相談したのです。」
「うちも、叔父のところに一族の者が詰めかけたようで。」
赤の一族や黄の一族まで、個人的に先に挨拶したいというひと達が詰めかけて、困ったアースさんやグレゴリーさんがキルビルさんに相談し、それなら、不公平を無くすために、挨拶は無しにしよう、ということになったとか。
「最後の決め手は、兄の助言でしたが。」
お兄さんのキィ隊長が、「フィルド隊長の時みたくなるって教えてやれ。」と言って、それをキルビルさんが伝えたら挨拶は無しになったそうだ。
昔、フィルド隊長にメラ様を見るなと追い出された年長組はそれで大人しくなりましたね、とキルビルさんは楽しそうに教えてくれた。