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後を付いて進んで行くと、邸内が静かなことに気づいた。
綺麗な花が生けられた豪華な花瓶や一族の歴史を表したものなのか、青の一族がたくさん描かれたタペストリーが並ぶ華やかな場所なのに、他のひとには出会わない。
キルビルさんに案内してもらった時は真ん中の建物を通って、執務室のある奥の建物に着いたし、スタグノ族へのお披露目の時は、会場になるホールには時間もかからず案内された。
その時だって、誰かしら途中で見たのに、今回はいくつもの小さな建物を通り過ぎても、まだ誰にも会わない。
特別なゲストのためのルートとか?
前は普通だったのに。
ルートが違う理由は何だろう。普通に考えると時間稼ぎかな。
こちらが早く到着し過ぎて、向こうの準備が整ってないとか。
前を行くキルラさんからは、嫌な魔素も感じないから、嫌がらせってことはないと思うけど。
ん?あのタペストリーの青の一族のひと、なんだか目につくなあ。
目の縁に黒い色が入ってて、どのタペストリーにも中心に描かれている。
畑を耕したり、大人数で宴会したり、何だろう、敵かな?黒い塊に塀や建物から物を投げて対抗している。
この辺りは、きっと一族にとって伝説になるような偉人のタペストリーなんだろう。
そういえば、青緑だからわからなかったけど、この青の一族のひとの目の周りの模様って、青蛙にそっくり。
何だか親近感わくなあ。
それに、飲み食いしてるタペストリーが多いし、青の一族が昔から食べるのが好きなのがわかる。
美食家な一族なんだよね。
ヘビの一族とは違った意味で食への情熱が熱い一族だ。
だから、今回のレシピ公開のためのお披露目が、赤の一族だけでなく、スタグノ族全体へとなった時には、諸手を挙げて賛成したらしいし。
こんな大騒ぎになって、アースさんにはかえって申し訳ないことになった。
本当なら、赤の一族へのお礼としてのお披露目だったのに。
キィさんにしばらく会えてないから、奥さんで赤の一族のリッカさんがどう思ってるか聞けないままに今日になってしまった。
きっと招待されているだろう。
会ったらなんて声をかけよう。
ああ、それも含めて緊張してきたなあ。
もう。長老さん達が無茶をするから。
「こちらが最後のドアになります。中で皆さまお待ちです。」
ようやく到着したらしい。
皆さまって、誰がいるんだろう。