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「トカゲの一族、次代様〜、伴侶様〜、おな〜り〜。」
時代がかった声に、青の一族の長の邸宅の扉が開く。
いくつか同じことを繰り返すと、前回と違い、仰々しい迎えがズラリと並んでいた。
そういえば、ここって時代劇な場所だったなあ。
前に挨拶に来た時は、キルビルさんが直接迎えに来てくれたから、途中までで済んだけど、今回は青の一族のお出迎えを全部体験することになりそう。
ここは青の一族の長キルビルさんのお宅で、今日はキルビルさんやアースさんが手掛けるお店のお披露目だ。
ついでに、私のスイートポテトや魚のレシピもお披露目もするんだけど、私達は表向きはゲストの扱いになる。
深緑の森の一族の長であるメルバさんや長老さん達も招待されてるから、私達だけが特別なゲストというわけではない。
レシピのことだって秘密のはずなのに、この出迎えって。
「「「ようこそおいで下さいました。」」」
一斉に頭を下げられる。
別世界だ。思わず足が引きそうになるのを気力で留める。
魔素は動揺が出ないように頑張って抑えたけど、察してくれたクルビスさんが、私の腰を支えてくれた。
ありがとうございます。
頭を下げた青の一族の方たちは、胸に手を当て、軽く頭を下げた礼の形のままで動かない。
良かった。気づかれてないかも。
「出迎え痛み入ります。トカゲの一族、クルビスです。長のキルビル様にご挨拶したいのですが、どちらにおられるのでしょうか?」
クルビスさんが声をかけると、出迎えのひと達はようやく礼の姿勢を解く。
それから、先頭の真ん中に立っていた年配の青の一族の男性が前に出てきた。
「青の一族、相談役のキルラでございます。長はこの奥の披露目の間でお待ちです。僭越ながら、私が案内させて頂きます。」
キルラさんが礼の姿勢で答えを返すと、後ろの出迎えのひと達が、一斉に左右に分かれた。
一糸乱れぬ動きだ。これが青の一族の正式な出迎えかあ。
じゃあ、前回の挨拶の時って、かなり略式にしてもらったんだなあ。
キルビルさん、後ですごくクレーム受けたんじゃないかな。
それで、今回は正式に出迎えるってことになったとか。
ありそうだなあ。
でも、私、格式ばった文言とか知らないんだけど。
基本的な礼儀作法は習ったけど、話し方は特に言われてない。
キイ隊長には、基本はクルビスさんが喋るから、にこやかにして、任せておけば良いって言われたから、さっきもそうしたんだけど。
不安になってくる。顔と魔素には出ないように気をつけないと。