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「あらあら、まあまあ、何て滑らかな舌触り。濃厚なお味ですのに、冷やすとまた食べやすくって。」
ウジャータさんが、ウットリしながら大絶賛してくれる。
今日は、長老さん達とレシピの許可の話をしてから、次の休みの日だ。
今日、ウジャータさんとひと通りレシピを確認して、試作を作る。
さらに、次の休みにはお披露目が決まっている。
まさか、こんなに早く決まるとは。
新しいレシピの公開のための長老さん達の意気込みは凄まじかったらしい。
あらゆる伝手を頼りにお披露目を早めたらしいんだけど。
赤の一族のアースさんのお店でやるはずだったスイートポテトのお披露目が、何故か、魚の新しいレシピの紹介とまとめられいた。
しかも、赤の一族だけに利権が集まらないように、スタグノ族へのお披露目という形にもっていったそうだから、水面下で色々あったんじゃないかと思う。
話を聞いた時、フェラリーデさんやリリィさんが遠くを見てたから、かなり無茶をやったんだろうな。
そういえば、しばらくキィさんの姿を見てないなあ。
いつもは食堂で顔くらい合わせるのに。
…この異様に早いお披露目のためにこき使われてたりして。
ははは。ありそう。
だとしたら、こっちもプレッシャーだなあ。
ただの素人が作ったスイートポテトなんだけど。
「ハルカ様?どうなさったの?」
ああ。いけない。
一人でプレッシャーを感じて黙りこんじゃった。
ウジャータさんが心配してくれてる。
魔素が揺れてしまったのかも。
「いえ。あんまり早くお披露目が決まったので、当日はどうなるだろうなって、緊張してきて。」
「まあまあ。そうですわねえ。前々からのお約束とはいえ、急に決まりましたものね。こう日にちに余裕がないとなると、緊張致しますわよねえ。」
「はい。数日前には、まだ話もまとまっていなかったはずなんですけど。」
「…深緑の森の一族の方々もいくつか参加なさるそうですし、少数参加と聞いておりますけども、中々、気合いが必要ですわね。」
「え!深緑の森の一族の方々も?」
ウジャータさんの衝撃の一言に、驚いて聞き返してしまう。
スタグノ族だけじゃないの?
「何でも、お披露目の格付けだとか。スタグノ族のパーティーには、目的とは関係ない、有名な方々の招待がありますの。皆さん、そういうのがお好きな方々ですから。」
たしかに、好きそうだなあ。
じゃあ、有名人が呼ばれるなら、メルバさんや長老さん達も含まれてるよね?
甘いものを食べられる機会を逃すわけないから、嬉々として引き受けたんだろうな。