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「ハルカちゃんなら、街の外に送る転移陣も起動させられそうじゃの。」
「うむうむ。魚人の里から帰ってからの回復も早かったしの。」
「アニスはその翌日まで回復せなんだというに。」
「じゃから、ウワサになったんじゃな。」
「ハルカちゃんは知らんようだが、魚人の里から帰って異例のスピード回復をしたことは、中央地区ではかなりのウワサになっとるんじゃぞ?」
「それが一つで頑張っとったキャサリンちゃんのウワサと混ざって、今回のお客さんにおかしな風な伝わったんじゃろうて。」
中央でウワサって。
何それ。知らないんだけど。
異例のスピード回復って。
確かにクルビスさんにも早いって、褒められましたけどね?
「私の場合、回復と言っても、身体が動かせるくらいであって、クルビスさんやアニスさん達みたいに、回復した日から仕事したりしてませんから。」
普通に魔素で治療してるアニスさんを見た時は、魔素の扱い方が違うんだなあって思ったし。
クルビスさんやフェラリーデさんもそうだけど、現役の隊士さんは、鍛え方が違うんだろうな。
それに比べて、私は動けるようになっただけなのに。
一般より早いとはいえ、何でウワサになるんだろう。
「ハルカちゃんはそう言うが。いくら転移局勤めと言っても、数日は魔素が安定せんのが普通じゃぞ?」
「それも、魔素が多ければ多いほど、安定に時間がかかるもんじゃ。」
「単色で、半日で日常に支障がないほど安定するのは、すごいことなんじゃぞ?」
わかっとるのかのう?と言いたげな目で私を見る長老さん達。
そうかなあ。周りがすごい人ばかりだからか、あんまり実感がないんだけど。
「ふむ。ピンとこんか。…うーむ。守備隊の転移陣は起動させられて、物も無傷で送れたんじゃろう?」
「はい。」
勤め始める前だけど。
今は無理じゃないかなあ。
「いやいや。一度覚えた魔素の込め方は、そう忘れんて。守備隊の転移陣から無傷で送れるとなれば、すでに一流じゃからな?」
ぎく。
なんでわかったんだろう。
「顔に出ておるぞ?キィが惜しがっておったんじゃ。ハルカちゃんなら、守備隊の術士としてすぐにでも勤められるのに、と。」
苦笑しながら、長老さん達が説明してくれる。
そんなに顔に出てるかな。
それにしても、キィ隊長に褒められるのは嬉しいけど、それはリップサービスもあるような。
守備隊の術士になるのは、すごく難しいって聞いてるし。
「守備隊の術士になる最終試験は、魔素の封印じゃ。ハルカちゃんは出来るじゃろう?」
封印を私が出来る?
あ、そういえば。
前にカイザーさんを狙って、詐欺師が気持ち悪い箱を送り込んできた時にやったっけ。
極悪な術式が組み込まれてて、それが気持ち悪くて、箱を魔素で包んだけれど、後であれは封印だったって教えてもらったんだっけ。
「あれは、咄嗟に、たまたま魔素で包んだだけで。無我夢中でしたし。」
「咄嗟に出来るから、すごいんじゃがなあ。」
「クルビス隊長がハルカちゃんに関して、箝口令をしかんかったら、各地区の守備隊や上層部から、うちの地区の術士にとお誘いが来とったじゃろうし。」
えええ。何それ。
聞いてないんですけど。