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「全く!お客様に噂レベルの情報を教えるなど、何を考えているのか。」
うわ。また魔素が飛んで来た。
前に来た時も思ったけど、迷惑だなあ。これ。
私達は大丈夫だけど、北西の地域は魔素が弱い人達が多いのに。
もし、お客様が前を通りかかって、強い魔素に当てられたりしたら困るんだけど。
「ギガ殿、そのお話はここでは。」
「あ、ああ。そうだったな。失礼した。全員いるなら丁度良い。私が持って来た封筒はあるだろうか?」
「はい。こちらに。」
カイザーさんのひとことで我に返ったらしく、魔素を撒き散らすのはやめたようだ。
視察の人は持ってきた封筒の中身を見せてくれるみたい。
中身は何だろう?
この人がわざわざ持って来るぐらいだから、重要書類みたいだけど、カイザーさんはともかく、私達まで見て良いのかな。
「今日は北西の転移局が中規模になった証明書を届けに来た。扱いはすでに中規模に変更されているが、証明書の発行がやたらと遅れてな。念のため、私が届けに来た。」
やたらと遅れてって、これも嫌がらせなんだろうなあ。
だって、視察が終わってすぐ、デリアさんの移動が決まってるから、その時点で扱いは中規模になってるのに、証明書だけ今頃とか。
あからさまだなあ。
もし、視察の人が届けに来てくれなかったら、この証明書もなかったことにされたりしたかも。
「ありがとうございます。問い合わせしても返事がなくて、どうしようかと考えていたんです。助かりました。」
カイザーさんは嬉しそうに中規模転移局の証明書を受け取った。
カイザーさん、問い合わせしてたんだ。
「…。次からは、そういう問い合わせは、私宛に出せ。今回は、私が規模替えを担当したから私に情報が届いたが、次はわからん。けしからん話だがな。」
あれ。次も何かあったら協力してくれるんだ。
思ってたよりいい人みたい。
中央局の偉い人に後ろ盾になってもらえれば、すごく助かる。
カイザーさん達も驚いたみたいで、目を見開いている。
「よろしいのですか?」
「この私が良いと言っているんだ。何も問題はない。」
恐る恐る聞くカイザーさんに、ふんっと、鼻息荒く偉そうに答える視察の人。
いつも通りの嫌味な感じだけど、味方になってくれるなら、こんな心強いことはない。