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「それにぃ、私の実家がここになければ、ここでの勤務もかなわなかったでしょうねぇ。」
「私の派遣も、私が薬師通り出身なのと、深緑の森の一族の長さまの後押しがあって叶ったものですしね。」
カイザーさんとキャサリンさんが苦笑しながら話してくれるのは、眉をひそめるようなものばかり。
つまり、地元出身の術士や事務方がいないと、派遣されないってことだ。営業する気あるわけ?
「…ここで勤務するっていうのは、落ちこぼれみたいな扱いをされるんですぅ。伴侶探しにも響きますからぁ、術士も事務方も誰も行きたがらないんですよねぇ。」
声をひそめて続けるキャサリンさんの話に、色への差別はかなり根深いものだと痛感した。
その認識のせいか、以前に申請した状態を引きずっているからか、未だに北西の転移局は「術士1、事務方1」の小規模転移局の扱いのままなのだそうだ。
臨時の派遣も、引き受けてくれる術士さんがいて初めて成り立つそうで、今回デリアさんが来てくれるのも数年ぶりなのだそうだ。
話を聞けば聞くほどため息が出る。
差別がひどい上に、それがまかり通ってるのは問題だなあ。
それに、術士自体が少ないのも問題だ。
数が足りないから、術士の派遣が滞るのだし、数が増えれば北西で働いてもいいってひともきっと出てくるはずだ。
どちらも一気に解決は出来ないけれど、少しずつ認識を変えていけないかなあ。
白のイメージアップと同じく、所変われば常識も変わりますよ~、みたいな感じで。
まずは私の働いてる北西の転移局は良い職場ですよってアピールからすれば…。
ん?ちょっと待ってよ?
そんなに不遇な扱いを受けてる北西の転移局に、どうやって私は勤務出来るようになったんだろう?
あれ?今の話と私の状況ってあってないよね?
「数が増えるのはすごいことなんですね…。でも、じゃあ、どうして私は北西の転移局で働かせてもらえることになったんでしょう?」
「ああ!それ、クルビス隊長のおかげですぅ!」
キャサリンさんが目を輝かせて身を乗りだしてくる。
カイザーさんもそれを止めるどころか、にこにこと目を細めて頷いている。
「そして、ハルカさんのおかげです。」
どういうことだろう。
私が希望して働けることになったとは聞いていたけど、今の話だと希望しただけでは働くのは難しそうだけど。