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「では、ギガ殿、ビドーさん。よろしくお願いします。」
「任せときな。」
「うむ。さあ、お客様。参りましょう。」
「は、はい。よろしくお願いします。」
荷物を捌いていると、カーテンの向こうからカイザーさん達が出てきた。
早いなあ。ちゃんと話がついたのか、お客様の魔素は落ち着いている。
視察の人とお客様、そしてビドーさんは、そのまま、混雑してる道に混じって行ってしまう。
カイザーさんは私の警備のヨッキさんと挨拶をし、キャサリンさんと交代してカウンター業務に戻った。
どうなったんだろう。
うう。気になるけど、今は目の前のお客様が先だ。
「次にお待ちのお客様。大変お待たせ致しました。」
お昼までに終わるのかな。これ。いやいや、とにかくやらないと。
一抹の不安を持ちつつも、集中して途切れることのない行列を捌いていく。
そうやって、無心でやったのが良かったのか、お昼ギリギリにはメドがついていた。
すごい。お昼までに終わった。
「ありがとうございました。」
カイザーさんが午前中最後のお客様の受付を終えて、ぐっと伸びをする。
ふう。私も肩を回そう。ああ。疲れた。
「お疲れ様です。では、私は外に出て、通常の警備に戻らせて頂きます。」
「あ、はい。お疲れ様です。お願いします。」
ヨッキさんも大変だったよね。
狭い端っこでじっとして警備なんて。
これから外かあ。
暑いのに大変だなあ。
こっちには熱中症とかないのかな?
倒れたりしないんだろうか。
うーん。
そういうの、メルバさんがそのままにしておくとは思えないから、何か対策をしてるんじゃないかなあ。
でなきゃ、この南国で要人警護なんて出来ないよね。
でも、心配だから、後でクルビスさんに確認しておこう。
「戻ったぞ。」
あれ。視察の人。帰って来たんだ。
お客様の姿はない。ビドーさんはキャサリンさんのご実家に預けてた娘さん達と一緒に外で手を振ってる。
ありがとうございました〜。
こちらも手を振って見送ると、視察の人が例のお客様の話を始めた。
「無事にお客様を送ってきた。私の権限で最短で送っておいたから、手紙が届くより早い。間に合ったはずだ。」
「ありがとうございます。ギガ殿が来てくださって助かりました。大変だったでしょう。」
「全くな。今日は書類を届けに来ただけだというのに。だが、良かった。おかげで、転移局員にあるまじき輩もわかったしな。」
転移局員にあるまじき輩?
それって、ここを紹介した局員さんかな。