4
「申し訳ありませんが、当転移局の転移陣は初期のものでして。新しいものより大きさはありますが、街の外までは転移させられません。」
カイザーさんもお客様が私を見てるのに気づいてるらしく、さりげなく視線を遮るように動いてくれる。
カイザーさんが言う通り、ここの転移陣はたとえ大きく見えても、魔素はあまり必要ないから、街の外までは転移出来ないだろう。
街の外までひとや物資を運ぼうとしたら、守備隊の転移陣くらいの大きさと精度が必要になると思う。
多分、広場の転移局の転移陣も守備隊と同じくらいか少し小さいくらいの規模なんじゃないかな。
「そんな。ここなら送れると聞いてきたんです。何とか送って頂けませんか?」
悲しげな魔素を出しながら、哀れっぽく訴えるお客様。
誰に聞いたのよ。この場の全員が内心つっこんでると思う。
カイザーさんも困ってるみたいだ。
強引に来るなら追い返す方法もあるけど、困って来ましたって風に来られると断りにくいから。
でも、ここの転移陣じゃ実際無理なんだし、断るしかないよね。
広場に送る手続きをしたところで、このお客様の荷物の場合、何か後で言われそうな気がするし。
出来れば追い返して、別の転移局に行って欲しいんだけど、多分、帰ってくれない気がする。
やだなあ。並んでるお客様が増えてるし、キャサリンさんが空いてるカウンターで何とか荷物の受け渡しはしてるけど、荷物はどんどん送られてくるし、そのうち流れがストップしそうだ。
「おいおい。どうなってんだ。この行列は。道が塞がっちまってるじゃねえか。」
「いっぱい〜。」
「とおれない〜。」
並んでるお客様の奥から、岩のようなお顔が見える。
この辺りの顔役、ビドーさんだ。
可愛い声もするから、娘さんのベッカちゃんとフルールちゃんも一緒にいるんだろう。
3人の言う通りだとすると、通りを埋めてしまうくらいの行列になってるみたいだ。
うわあ。後で苦情が来るなあ。
復帰初日から面倒な。
「ちょっと通してくれ。すまんな。局長さん、何があったんだい。」
「ああ。ビドーさん。すみません。ちょっと問い合わせの対応に時間がかかってしまって。」
顔役のビドーさんと転移局の局長のカイザーさんは知り合いみたいだ。
どちらも北西の地域を代表するふたりだもんね。
「この時間に問い合わせ?この転移局にかい?」
カイザーさんが言いたいことがわかったらしく、ビドーさんも目を細めて訝しんでる。
疑問に思うのもわかる。地元のひと達しか使わないのに変だもの。