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ソワソワしながら仕事してたら、お客様が並び出した。
私が帰ったことは広まっているらしく、常連さんがお帰りと声をかけていってくれる。
それが嬉しくてただいまと答えていたら、あっと言う間に混んできた。
なんだか、最初の頃みたいだなあ。
「こちらへどうぞ。荷物の受け取りの方はこちらへ、送られる方は隣の受け付けに並んで下さい。」
転移局前が混在してきたのを見たカイザーさんが、列を作って、誘導する。
ちょっとしたことだけど、それで周りは落ち着いたようだ。ちゃんと並んでる。
いや、ひとり、変な感じのお客様がいる。
チラチラこっちを見てる。
よくあるから気にしないようにしてるけど、なんだか嫌な予感がヒシヒシとするなあ。
今日はカウンターには近づかないようにしよう。
「はい、お待たせしましたぁ。手紙の配達ですねぇ…。カイザーさぁん。ちょっと良いですかぁ?」
チラチラ見てくるお客様だ。
手紙かあ。珍しいなあ。北西の転移局から手紙を出そうとするなんて。
「こちらなら送って頂けると聞きまして。」
お客様が穏やかに困ったように質問する。
何か問題でもあったのかな。
「お客様、大変申し訳ございません。こちらの宛先は街の外になりますので、当転移局では受け付けできません。広場にあります大きな転移局をご利用下さい。」
どうやら、宛先が遠かったみたい。
小さな転移局では、基本的に街の中でのやり取りに使うから、外に向けた大きな魔素を扱える転移陣はないから、引き受けられない。
まあ、大きな転移局にこちらから送ればいいのだけれど、うちは、荷物や手紙がきちんと届かないなんてこともあるからなあ。
嫌がらせはまだ無くなってないみたいだし。
みんなそれを知ってるから、手紙は最初から持ってこないくらいだ。
カイザーさんの説明にしょんぼりしたお客様は、またチラリと私を見た。やな予感。
「しかし、こちらは転移陣が大きく、遠方へ送る技量の局員もいらっしゃるのでしょう?」
うわあ、やな予感的中。
転移陣が大きいなんて初めて聞いたけど。
普通、だよね?
珍しく床に直接刻まれたタイプってくらいで。
ああ、また見てる。
これは、私狙いかあ。