2
「あ、そうそう。お休みの間にぃ、これ、届いてましたぁ。」
「え。」
「ハルカさん宛てになっているんですが、魚人の里からのようでして。」
キャサリンさんが急に立ち上がって、いそいそとカウンターから荷物を取り出す。
カイザーさんが補足してくれた。
魚人の里からの荷物。何だろ?
あ。クルビスさんのお土産!
「ああ。多分、伴侶が私にと買ってくれたやつだと思います。数が多くて、別で送ってもらうことになってしまって。」
いらないって断ってるのに、似合うと言っては、私の伴侶はネックレスやら細工の箱やら買っていた。
あまりに嵩張るので、別で送ってもらうことにしたんだよね。忘れてた。
「お土産ですかぁ。ルシェリード様もぉ、イシュリナ様に山のように買ってたって聞いてますぅ。」
「それが切っ掛けで魚の干物やゼリーなども街に広まったんですよね。」
「そうなんですか?」
「知りませんでした。」
私の説明にキャサリンさんは納得し、カイザーさんが豆知識を披露してくれた。
私とデリアさんは驚いてカイザーさんを見る。
「意外と知られてないんですよね。私の祖父が乾物を売るようになった切っ掛けがゼリーだったそうで。その話はよく聞かされてまして。」
はああ。昔はゼリーってなかったんだ。
ルシェリードさんは新しいものや珍しいものが好きだから、気に入ったんだろうなあ。
もしかしたら、出来立てを食べたのかもしれない。
メルバさんがゼリーって名付けたみたいだし、話に聞いてたとか。
「へえぇ。ゼリーって、魚人の里で作られるんですねぇ。知りませんでしたぁ。」
珍しい。キャサリンさんが知らないなんて。
でも、知られてないみたいだし、キャサリンさんのご実家では乾物は扱わないもんね。当たり前か。
ん?なんだか、キャサリンさんの目がキラキラしてるような。
カイザーさんも恥ずかしそうに目を細めて照れてるような…。
ちらっとデリアさんを見れば、微かに頷かれる。
んんん?もしや、私がいない間にちょっと進展したみたい?
聞きたいけど、本人達の前じゃねえ。
何があったんだろう。気になるなあ。
「すみませーん。もう開いてますか?」
「あ。いらっしゃいませ。」
ああ。残念。お客様だ。
もうちょっと、あのままのふたりを見てたかったなあ。
カイザーさんはすっかり仕事モードだし、キャサリンさんも転移陣の方に行ってしまった。
しょうがない。話を聞くのは後にしよう。