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最後の試食は戦士部隊のシード副隊長。
クルビスさんは先に済ませてたので、まだ上でお仕事してるらしい。
術士部隊のおふたりが呼んでくれたので、すでに干物は焼いてある。
後はタレに絡めて出すだけだ。
「うお。すげえ匂い。魚、なんだよな?」
すごい匂いといいながら、目を見開いたのは一瞬で、すぐに目を細めてうっとりした感じになる。
魚といいながら肉の匂いだからか、嫌いな匂いじゃないみたいだ。
「皆、驚くの。」
「まあ、魚と聞いてこれではな。」
「どうしても肉を連想するもんじゃ。」
長老さん達が笑って言うのに気づいたシードさんが、長老さん達に向かって礼を取る。
シードさんには珍しいことだ。それだけ肉の匂いが気になったんだろう。
「まあ、とにかく食べてみてくれ。それでわかる。」
「お。ルドがそういうってことは結構自信あるんだな。」
ルドさんがシードさんに着席を勧めて、シードさんもワクワクした様子だ。
それを見て、ルドさんが手際よくタレを作って干物に絡めていく。
もう麻痺しちゃってるけど、それでもいい匂いが部屋に充満する。
作ってる時が一番いい匂いだよね。
シードさんもそう思ったのか、待ちきれない様子で身を乗り出している。
その間に長老さん達がご飯をよそって、シードさんに出す。
「これにはリギが合うんじゃ。」
「まあ、騙されたと思って食べてごらん。」
「おお。出来たようじゃの。」
長老さんが説明してる間に生姜焼きもどきが完成。
さあ。どうぞ。
「ふー。はぐ。もぐもぐもぐ。ごくん。」
む、無言。食べる音だけが厨房に響く。
かきこむようなことは無かったけど、お箸が止まらないようだ。
「気に入ったみたいだな。目を閉じてる。」
ルドさんが目を細めて、嬉しそうに言う。
へえ。シードさんが目を閉じて食べ始めると気に入ったってことなんだ。
味わうのに集中するためかな?
あ、お箸を置いた。
「ふう。」
お水を一息に飲んで、息を吐き出す。
そこでようやく目を開いた。
「どうだった?」
「ん〜。ちょい濃いめだなとは思う。北だと好みが出そうだ。でも、西ならこれでいい。辛味をきかしても良さそうだよな。俺はかなり気に入った!」
辛味かあ。
西の料理は辛いものが多いからなあ。味が濃くてもいいんだろう。
北はアッサリめの料理が多いから、これじゃあ濃いとシードさんも思うんだ。
うーん。地区ごとにも好みの味が違うのかあ。じゃあ、注意書きは必須だな。